August 27, 2014
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まるっきりのブラック体制だ。

 もし仮に、365日練習を続行している甲子園強豪校の練習スタイルをプロ野球の球団が取り入れたとしたら、その球団は、労働基準法違反で真っ先に摘発されることになるはずだ。

 球団でなくても、もし企業が、365日無休の献身と向上をそのメンバーに要求したら、間違いなく労働基準監督局の立ち入り調査を受けねばならないだろう。

 皮肉なことに、高校生にとっての野球が「仕事」でなく、「利益」を産まない「アマチュア」の「娯楽」ないしは「教育」の一環と見なされていることが、彼らのチームをブラック企業批判から免れさせているわけで、多くの強豪校は、体質としては、まるっきりのブラック企業なのである。

 私は、個人的には、甲子園を目指す子どもたちの練習ぶりや必死さを、日本で有数の新聞や放送局が、全社をあげて後援・称揚・美化・推薦している限り、ブラック企業はなくならないと考えている。

 なぜなら、「甲子園的」な美とは、「決して手を抜かないこと」であり、「全員が一丸となること」であり「決して休まないこと」であり「常に全力を尽くすこと」だからで、そこにおいて目標とされているゴールは、あまたのブラック企業経営者が唱えている勤勉と献身と一体感の哲学そのものだからだ。

 もうひとつ言えば、届かないボールへのダイビングに拍手を送り、攻守交代の全力疾走を義務付け、プレー中の談笑やジョークを禁じる甲子園の精神主義は、体制の不備や、補給の欠乏や、兵員の貧弱をすべて「精神力」で補おうとした帝国陸軍の精神主義をほとんどそのまま受け継いでいる。当然の話だが、この精神主義は、ブラック企業に特有な玉砕経営手法にも通底している。

 歴史学者の故・藤原彰氏(一橋大名誉教授)が、自著『餓死した英霊たち』(青木書店)の中で、厚生省(現厚生労働省)援護局作成の「地域別兵員及び死没者概数表」(1964年)などを基礎データに独自の分析を試みたところによると、全戦没者230万人のうちの60%強、140万人前後が戦病死者であり、さらに「そのほとんどが餓死者」だった計算になるという(こちら)。

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女子マネはおにぎりを握るべきか:日経ビジネスオンライン