憎悪を生み出すものには抵抗する。『イスタンブール・ユナイテッド』

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東京国際フットボール映画祭2015で『イスタンブール・ユナイテッド』を鑑賞しました。
エジプト革命など主に中東方面から、普段はフットボールのサポーターとして生きている彼らが街に出た姿はネットで知っていました。サポーターは世界中に生息しているけれど、それぞれの環境の中から余暇やお金を捻出し現地(試合会場)にかけつけてチームの一員としてサポートをし、情熱は仲間と連帯しながら増幅させていく人たちのことをサポーターというのだと思います(ファン、サポーター論に首を突っ込むつもりはないのであしからず)。なので、中東からの写真だけではどうしてもサポーターの気質(クールだとか陽気だとか馬鹿だとか)というのがイマイチ読み取れていませんでしたが、こうして映像として目の前に差し出されたものに、ただただ気持ちが高まってしまいました。

私は東日本の震災の後に、高円寺のデモとか反原発のデモ、官邸前での抗議などにたまに出かけていたりしてました。現地に駆けつけて自分の血に刻んでいく体験みたいなものが次の行動の原動力になるんだろうなと思ったからでもありますが。世の中を変えていかなきゃみたいな大義名分は後付けみたいなもので、行かずにはいられなかったという気持ちが一番大きかったように思います。

『イスタンブール・ユナイテッド』では、普段はライバルチームとして反目しあっているサポーターたちがタクシム広場でショッピングモール建設反対の座り込み運動で排除されている市民を見て路上に出て行く。フラッグやチームの名前が入ったマフラーを掲げ、ここがホームスタジアムであるかのように横断幕を街に掲出する。そしてお得意のチャントで沈んだ気持ちをどんどんあげていき市民を巻きこんでいくさまが本当に素晴らしくて(いつもスタジアムでやっていることをそのままやっていただけなのに)、こいつらマジで最高!! 不遜ながらこれなら俺らにもできるよ!!と思ってしまったのであります。

上映後のトークで木村元彦氏からのサッカーで世界を見るエピソードの数々にも大変刺激を受けました。偶然と必然、政権奪取とデモクラシー、差別と偏見、国とサッカーを取り巻く環境などなど。上映に尽力されたスタッフの皆様に心から感謝いたします。

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