ボードゲーマーのためのKickstarter講座
ボードゲームのオープン会などに参加すると、最近のゲームっぽいのに売ってるところを全く見たことがないゲームや、やたらとコンポーネントが豪華なゲームを見かけたことがありませんか?もしかするとそれはKickstarterで入手したゲームかもしれませんよ。
最近Twitterで話題になったGentesのデラックス版とか、ちょっと前ならBrassのデラックス版などもKickstarterが最初の入手経路でした。そんな魅惑のKickstarterですが「そもそも何なの?」「どうやればいいの?」といった方も多いかと思います。
ということで、今回はボードゲーム界隈で最もポピュラーなクラウドファンディングサイト、Kickstarterでボードゲームを入手する方法を紹介したいと思います。独特の用語もあるので、後ほどその解説もしていきます。
※内容は2019年6月現在のもので今後変わる可能性があります。
はじめに
まず最初にクラウドファンディングサイトとはなんぞやですが、非常にざっくり言うと、個人や会社などがインターネットを介して不特定多数の人たちに「自分たちはこんなことをしようとしているので支援してくれませんか?」と募り、それに賛同する人たちがお金で支援するのを仲介するサイトです。
投資家のようなプロでなくても個人が気軽にそのプロジェクトを支援できるのが特長の一つで、今回紹介するアメリカ発のKickstarter以外にも色々あります。国内ならCAMPFIREやMakuakeなどもそうですね。そして、その中でボードゲーム関連の資金調達で圧倒的に利用されているのがKickstarterというわけです。
ITガジェット開発、新規サービス立ち上げ、イベント開催など様々なプロジェクトがあり、シンプルに寄付を募集するものや何らかの特典という形で見返りを設定するものなど様々ですが、ボードゲーム関連においては基本的にボードゲームそのものが見返りになることが大半です。
通常の購入に比べて何が良いかというとプロジェクトによってケースバイケースですが、例えば
- そもそもKickstarterでしか手に入らないゲームがある。
- Kickstarter限定の豪華版が選べたり、調達金額が増えるにつれて無料でおまけが大量に追加されることもある(限定コンポーネントだったり限定拡張だったり)。
- 一般流通前に先行入手できる場合が多い。
- 一般流通時よりも安価に入手できる場合も多い。
といったようなメリットがあります。
逆にデメリットとしては、
- 発送予定が数ヶ月~1年以上先で、さらにその予定から通常数ヶ月~1年以上遅延する。
- 大体送料が高い(日本宛は$20~$30程度が普通)
- 普通和訳は付かないので、ルールやコンポーネントを自力で和訳する等の労力がかかる。
- 不着・欠品・破損などがあってもすべて自分でやり取りが必要(基本的にメーカーやクリエイターと直接英語で)
- 後で日本語版が発売されることも時々ある。
- 出資者を差し置いて先に一般発売されることがある(Queen Gamesなどにありがち)。
- プロジェクトが頓挫したりして泣き寝入りになる可能性がなきにしもあらず
特に最後の部分は非常に大事で、 Kickstarterはあくまでクリエイターに賛同して支援する場という位置付けであってショップではないので、原則としてゲームが無事届く保証はありません!!!クリエイターに努力義務はあっても提供責任はないので、届かなくても仕方ないと思えない人は手を出さないのが無難です!!! 間違ってもネットショップに注文するような感覚で利用しないようにしましょう。
幸い自分は過去数十件と支援した中でプロジェクトが頓挫したり途中で作者が音信不通といったケースに遭遇したことはありませんが、知人でそういったケースに遭遇した話も聞きます。また、8割のプロジェクトで当初予定よりも数ヶ月遅れて届きましたし、何回かは欠品があってメーカー連絡したり、自分だけ物が届かないので催促したりといったことはありました(たまたまどのメーカーも日常会話レベルの連絡をすればちゃんと送ってくれましたが)。
Kickstarterには一般流通には中々乗らないような魅力的なゲームが次から次へと現れますが、このような特徴を踏まえて全ては自己責任で、ということで次に進みたいと思います。
利用前の準備
Kickstarterを始めるにあたっては以下のものがあればOKです。
- Kickstarterのアカウント
- クレジットカード
- 若干の英語力
- トラブルがあっても自力で解決するぞという強い意思
Kickstarterのサイトは日本語対応しているのですが、プロジェクトの説明自体は基本的に英語ですし後々の配送先確認なども英語なので、英語力が完全に0だとかなり心許ないです。とはいえ一応Google翻訳等の助けを借りればほとんどの場合はなんとかなります。
ではまずアカウントを作りましょう。Kickstarterの公式サイトにアクセスし、右上の「サインイン」をクリックしてログイン画面を表示し、下の方にある「サインアップ!」をクリックします。
次に表示される画面で名前、メールアドレス(+確認用にもう一度)、パスワード (+確認用にもう一度)を入れて、「アカウントの新規作成」をクリックします。これでもうアカウントが作られました。超簡単!!ちなみにアカウント名はメールアドレスです。
アカウントが作成できたら、先ほどのログイン画面でメールアドレスとパスワードでログインします。ログインできたら画面右上が「サインイン」からプロフィールアイコンに変わります。
最後に、支払いに使用するクレジットカードを登録します。
画面右上のプロフィールアイコンクリックするとメニューが開くので、そこから「設定」を選びます。
設定画面が表示されたら「お支払い方法」をクリックするとクレジットカードの入力画面が表示されるので、カード情報を入れます(セキュリティコードはクレジットカード裏面に書かれている3桁の数字です)。その後「保存する」をクリックします。
以上で準備完了です。必要に応じて追加で2段階認証を設定しておくとセキュリティ的に安心ですね。
ボードゲームを探す
ようやくここからが本題です。
Kickstarterにある膨大なプロジェクトからボードゲーム関連を探すのは大変なので絞り込みを行います。ちょっと分かりにくいので、手っ取り早く見たい方は以下のURLから開けば絞り込んだ検索結果に直行できます。
手動で行く場合は次の手順になります。
- 画面左上の「さがす」をクリック
- 検索対象として「全て」を選択
- 一覧表示されたら上段の「絞り込み」から ゲーム → テーブルトップゲーム を選択
これでかなり絞り込まれます。ただし、このカテゴリにはボードゲームだけでなくTRPGも含まれます。
用語について
さて、これで好みのボードゲームを探すことができるようになりましたが、各プロジェクトの説明には色々と独特の用語が出てくるので、具体的な出資方法に進む前に解説しておきたいと思います。
【 プレッジ (Pledge) 】
支援金(出資金)のこと。繰り返しますがあくまで購入でないことを念頭に!
ちなみにプロジェクト終了前ならキャンセルすることができます(後述)。また、終了時に目標金額に達しなかった場合は請求されません。
出資期間が終了して締め切られると、予め登録していたクレジットカードからプレッジ額が引き落とされます。
【 リワード (Reward) 】
プレッジに対する対価(見返り)のことで、ボードゲーム関連のプロジェクトは大半が製品そのものです。通常版と豪華版など、いくつかのリワードから選べるプロジェクトも多いです。
【 バック (back) 】
支援(出資)すること。日本では俗に「キックする」や「蹴る」と言われる場合もありますが、公式サイトでは一貫して「バックする」という表現です。
【 バッカー (Backer) 】
支援(出資)した人のこと。
【 アドオン (Add-on) 】
支援額を増額することで追加できるもののこと。例えば拡張だったり、置き換え用のリッチなコンポーネントだったりと色々なパターンがあります。
ちなみにボードゲームの拡張のプロジェクトの場合は本体が追加できることも多く、それどころか他の製品本体を追加できる場合もあります。
ただし、そういった今回のプロジェクトそのものではないアドオンを追加すると到着が遅れる場合も多いのと、送料がその分増額される点には注意が必要です。
アドオンの追加方法には以下のようなパターンがあります。
- アドオン付きリワードが元々リワードの一覧に用意されている
- プロジェクト終了後にプレッジマネージャー(後述)で追加する
【 ストレッチゴール (Stretch goal) 】
一定の支援金額に達すると追加されるおまけ(追加要素など)。SGと略されたりします。
出資額そのままでコンポーネントが豪華になったり、有料のアドオンが無料になったり様々で、わざわざ通常の購入よりリスクの高いクラウドファンディングで支援する醍醐味のひとつです。
中でも「Kickstarter Exclusive」と書かれているものは限定品の意味で、一般流通版(リテール版)には原則付属しません。そう書いていないものでも一般流通版に付属しないケースは多く、日本語版が出るのを待つかSG目当てでバックするかは悩みどころですね。
【 アーリーバード (Early bird) 】
早期支援特典のこと。
例えば48時間以内に支援したら金額が安くなる、支援者の先着100人はアドオンが無料で付属、などのパターンがあります。
【 プレッジマネージャー (Plegde Manager) あるいは サーベイ (Survey) 】
プロジェクト終了後に別途メール等で案内が来る、支援内容確認 兼 追加注文画面のようなもの(あくまで注文ではなく出資ですが)。
これはプロジェクトによって実に様々で、pledgemanager.comやcrowdox.comのようなサイトが利用される場合や、メーカー独自サイトの場合もあります。
イメージとしてはショッピングカートにKickstarterで支払い済みの支援額が予め表示されていて、このタイミングでアドオンを追加したりでき、最後に配送先を入力するようなパターンが大半です。
アドオンを追加した場合は大抵画面上に支払い済み金額からの不足金額が表示されていて、内容を確定すると後で追加のクレジットカード支払いが発生します。
【 アップデート (Update) 】
プロジェクトの進捗や開発秘話などの更新情報。プロジェクトのトップページ下にリンクがあります。初期設定ではアップデートが追加されるたびに通知メールが届きます。プレッジマネージャーのアナウンスもここでされるため要チェックです。
ゲームを探す
ここからはボードゲームを入手する前提となる支援方法について説明します。先ほど説明した検索結果一覧画面を開いてください。
各プロジェクトには
- 説明の冒頭
- クリエイター名
- 現在の達成金額
- 達成率:達成金額が目標金額(プロジェクト成立金額)の何%に達しているか
- 締切までの残り期間
- カテゴリ
- クリエイターの住んでいる都市
が示されています。ここでまず注目したいのは達成率です。
一覧画面を最新順にすると募集が始まって間もないプロジェクトが先頭に来るわけですが、まだ先頭の方にあるのにいち早く達成率が100%を超えているということは、多くの人が「このゲームは面白そうだ!」「このクリエイターは信用できそうだ!」と判断したと言えるので、(遅延は大抵あるにせよ)プロジェクトとしてはかなり安心感があります。
ただし一点注意が必要で、中には目標金額をわざと低くしてこの達成率を大きく見せようとするプロジェクトがあります。そういった意味で、リワード数個分のような少額の目標金額が設定されているプロジェクトは怪しいので、手を出さないのが無難です。
プロジェクト内容の確認
では一覧から気になるプロジェクトをクリックして中に入ります。
先に確認したいのはクリエイターの情報です。プロジェクトを少し下に辿ると上の写真の赤枠のように表示されています。
注目するのはクリエイター名の下にある「XXプロジェクト」と書かれた部分です。この数は、そのクリエイターが過去に立ち上げたプロジェクト数です(後ろの「XXバック済み」はそのクリエイターが他のプロジェクトをバックした数なので無視)。
ここが「1つめのプロジェクト」になっている場合、現時点でそのクリエイターが生産や海外発送のノウハウを持ってない可能性があるため、途中でプロジェクトが難航するかもしれません。「Kickstarterは初回だけど他のところでクラウドファンディングのノウハウは持ってるよ」といった説明でもない限り、あまりおすすめはしません。
ここからすぐプロジェクト説明を読んでいくのもいいですが、そもそも日本に発送してもらえるのか先に確認しておきましょう。
画面右側にリワードの選択肢がいくつか並んでいるので、「発送」と書かれた欄があるリワードのどれかをクリックしてください。
「発送」が「世界各国」なら日本発送OKですが「地域限定」となっている場合はクリック後に表示される「出荷先地域」に日本があるかを確認してください。あればOKです。ない場合は諦めましょう。
なお、ここで表示されている「お届け予定」は全く当てになりません!はっきり言って期待するだけ無駄なので「ま、いつか届くだろ」くらいの気持ちで考えておいてください。
ここまで来たら、心ゆくまでプロジェクト説明を眺めましょう(基本的に英語です)。
ゲームの概要やルールブックの確認、どんなリワードが選べるのか、それにどんなストレッチゴールやアドオンがあるか、送料はどれくらいか、などは見ておいた方がいいでしょうね。
リワードの選択と支払い
本文を参考にしてどのリワードにするか決めたら、画面右側にあるリワードの選択肢から該当するものをクリックします。
似ているようで内容が違っていたり分かりにくいものもあるので、本文と照らし合わせながら誤って別のリワードを選択しないように注意しましょう。
ちなみに選択肢にある「リワードなしプレッジ」はいわば寄付です。物は届きません。
また、「$1以上のプレッジ」といった極端に金額の少ないものも基本的には物が届きません。しかし、これには「支援者限定アナウンスが閲覧できる」「後のプレッジマネージャーで通常の支援者同様に本体やアドオンを追加できる=支払いを後回しにできる」といったことができる場合があり、そういった目的で選択するのはアリです(プロジェクトによります)。
このほか「for Retailers」などと書かれたリワードは個人用ではなく小売店用なので基本的には選ばないでください。
リワードをクリックすると先ほどの写真のように「出荷先地域」や「プレッジ額」の欄が表示されます。
ここで注意点があります。「出荷先地域」を選んだとき「日本 (+$20)」といった金額表示がある場合は送料のことで、プロジェクト締切後にプレッジ額+この送料が引き落とされます。分かりやすく安心です。
一方ここに何も表示されていない場合、ほぼ間違いなく送料が後追いで別途請求されます。大抵はリワードに「Shipping not included (送料は含まれません)」と書かれています。
「お、安い」と思ってバックしたら、後からプレッジマネージャーの画面で送料が上乗せされて思ってたより高かったとならないよう、必ずプロジェクト本文の後半に書かれている送料(Shipping Info)の項目を確認して、日本への送料を確認しておきましょう。送料請求は忘れた頃にやってきます。
また、極端にコンポーネントが多いゲームだったり、クリエイターのノウハウが貧弱だったりすると、締切後に「ごめん、当初見積が甘かったので送料追加請求するね」などというケースも稀にあり、その際は諦めて追加支払いするしかありません…
以上を踏まえた上でリワードの「次へ」をクリックすると支払い画面に移ります。
ここに合計金額が表示されていますが、実際の請求では円レートの変動やクレジットカードの海外手数料などが加算されるため、これより若干高くなることが多いです。
また、先ほども説明したとおり送料が後追いの場合、この画面で「配送」が0円でも後でしっかり請求が来るのでご注意を。
以上の内容で問題なければ「プレッジ」をクリックすることで完了になります。
この時点ではまだ支払いは発生せず、プロジェクトの締切後、目標額に達していれば支払われます。
リワードの変更、取り消し
もしリワードを変更したり、支援自体を取り消したくなった場合は以下の手順で変更・取消できます。
まずバックしたプロジェクトのトップページを表示させます。すると最上段に「プロジェクトをバックしました」と表示されているので、「プレッジの管理」をクリックします。
すると変更画面に移動するので、ここで「プレッジ内容の変更」あるいは「プレッジを取り消す」を選ぶことができます。
プロジェクト終了後の流れ
プロジェクト終了から実際にゲームが手元に届くまでの流れはプロジェクトによってケースバイケースです。大まかには
- 終了時点でクレジットカードからプレッジ額が引き落とされる。
- プロジェクトから都度進捗等のアップデートがある(設定を変更していなければアップデートが更新されるたび通知メールが届きます)。
- プロジェクトのアップデートでプレッジマネージャーにアクセスするようアナウンスがあるので、アクセスしてアドオンの追加や配送先の住所と電話番号を入力して確定する。
- 届くのを待つ。
という感じです。
プレッジマネージャーのアナウンスがあるタイミングはプロジェクトによってまちまちですが、生産の終了に近づいてきたあたりが多いですね。プロジェクト終了から数ヶ月後が普通なので「いつアナウンスがあるんだ」とやきもきせず気長に待ちましょう。
なお、アナウンス時には合わせて期限も告知され、期間内にアクセスして支援内容や配送先を確定させないと物が届かないので必ず確定させてください。通知メールが迷惑メールに入ったりしないように注意して、アップデートを見逃さないようにしましょう。
なおプレッジマネージャーと総称していますが、前述の通りプロジェクトによって使われるサイトはまちまちなので、具体的な手順は割愛します。いずれにしてもそのサイトはkickstarter.comではないので、怪しいサイトだと思ってスルーしないように注意が必要です。
その後はひたすら届くのを待つわけですが、大抵はアップデート情報で各地域への発送見込みがアナウンスされます。そこに書かれた見込みの日付よりさらに数週間遅れることはざらなので、ここでも気長に待ちます。ただ、もし1ヶ月以上経っても届かなかったら何らかのトラブルが発生しているかもしれません。
この場合はクリエイターに「自分は日本に住んでいますが未だに製品が届いていません。至急送ってください。」といったメッセージを(英語で)送りましょう。大抵の場合は何らかのレスポンスがあります。
メッセージの送り方ですが、バックしたプロジェクトのトップページにアクセスし、上段にある「表示する」をクリックします。
そこに「メッセージ」というタブがあるのでクリックすると文章入力欄が表示されるので英語で入力して「メッセージを送信」をクリックします。
これでクリエイターから何らかのレスポンスが返ってくるはずですが、数日間返信がないのは普通なので、イライラせずに待ちましょう。
おわりに
どうでしたでしょうか。色々ややこしそうに見えますが、慣れたら意外に簡単です。基本的にはリワード選んでバックして、プレッジマネージャーのアナウンスが来たら住所を入れて後は待てばいいんですからね。
とはいえ、どこまで行っても自己責任。繰り返しになりますが最悪届かなくても仕方がない、何かあっても自分で解決するぞという方だけ利用しましょう。プロジェクトで掲げられているゲームを「買った」のではなく「支援した」のですからね。
この記事がKickstarterに興味のある方の参考になれば幸いです。