山田迷路 — 『VRおじさんの初恋』を読んで泣きながら感想を書いてる

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『VRおじさんの初恋』を読んで泣きながら感想を書いてる

家族、友情、友情にしておきたかった恋愛、恋愛にならなかった友情、何にも至らなかった関係etc……あらゆる関係がままならなかったとき、手に入れたかった形で手に入らなかったとき、私たちは「もし〇〇だったら良かったのに」と願ってしまうことがある。そうして心象風景で描かれる理想像は広い意味での「仮想空間」である。


もしも、ここじゃないどこかであなたと出会えていたら。もしくは、もしもお互いの性別や年齢や住む世界が、性格が、外見が違っていたら。この理想的でロマンチックな、かつ現実逃避的ともいえる「仮想」は恐らくそこそこ多くの人が抱いている。


インターネット上の関係が現実世界に関わってくるような物語の一つに、映画『You’ve Got Mail』がある。現実世界では敵対関係にしかなれなかった男女が、インターネット上での関係で「出合い直す」ことによって恋愛を成就させる物語である。


『You’ve Got Mail』では、「仮想」が現実に介入して現実で幸福になる。


では『VRおじさんの初恋』はどうか。


「ロスジェネで割食ったナオキだけが何も得られていない。結局最後は現実を突きつけられて辛い。」という感想もちらほら見つかるけど、本当にそうなのかな。そうなのかもしれないけど。


このVRをめぐる物語の中で、2人はVRワールド上での恋愛関係を築く。しかし「仮想」の幸せは「仮想」のままで、どうしたって現実は”ままならない”。『You’ve Got Mail』の描くラブコメ劇のように人生はうまくはいかない。現実が大きく幸せになったわけではなく、奇跡は起きない。


でも一体そのことに何が問題あるのだろう。「仮想」のなかで幸福になることを選んだナオキとホナミは、しかし「仮想」と現実を決して切り離して考えない。触れ合ったのは確かに自分たちであると、最後に二人は答えを出す。


ここじゃないどこかであなたと出会うこと。仮想の世界であなたと出会ったことを信じること。それだけで良いんじゃないの。ままならない現状はそのまま横たわっているけれど、美しい思い出は仮想であっても美しく何にも代えがたい。


そもそも、救いのない物語だからといって誰のことも救えない物語だということにはならない。


きっとナオキはずっと思い出を抱えて生きる。葵と、そしてホナミと、ずっと共有している。美しくて温かくて寂しい思い出を抱えて生き続けるというのは、それだけで明日も生き続ける意味になると思うのだけど、それは甘いでしょうか。

VRおじさんの初恋 読書感想文 日記

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