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  • FLAT OUT!!! 作家インタビュー 勝木有香 × 颯ヒロセ

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    京都下鴨のオルタナティブスペースyugeにて3/1から3/8に開催されている展示「FLAT OUT!!!」

    京都で活動するシルクスクリーン作家の勝木有香と、東京で活動するペインターの颯ヒロセによる二人展である本展示を通して今回hogeがインタビューさせていただきました。

    展示の鑑賞がまだの方はこの記事がきっかけに、またすでにご来場いただいた方にはこの記事を読み改めて展示を見にきていただければ面白いかもしれません。是非是非よろしくお願いします。

    インタビュー:コニシムツキ(yuge)

    FLAT OUT!!! 作家インタビュー 勝木有香 × 颯ヒロセ

    -今回の展示は二人展ということですが、展示以前からお二人は面識や作品の認知などはあったんでしょうか。

    勝木有香(以下勝木):いえ、なかったですね。

    颯ヒロセ(以下ヒロセ):yugeからのオファーをもらった時に知りました。

    -最初にお互いの作品をご覧になった時の印象はどんなものでしたか。

    ヒロセ:僕の作品は動きのある線はあまりないんです。輪郭だったりばかりで。基本的に色の面で絵を見せるようなタッチなんですよ。
     でも勝木さんの作品は動きや時間を線に抽出した作品なので、二人の作品を並べて置いても互いに邪魔せずに面白く引き立ててくれるんじゃないかと思いましたね。

    -最初の印象から二人展の相性は良さそうだと感じていたんですね。

    ヒロセ:そうですね。実際こう展示で並んでるのを見ても無茶苦茶いいなと思います。

    -勝木さんはどんな印象でしたか。

    勝木:私は今まで一緒に展示をしたことのない新しい作風の作家さんだなと思っていましたね。ヒロセさんの作品は可愛らしさやストーリー性が強いので、私の作品がキツすぎないかと少し心配してましたね。激しすぎないかな、みたいな(笑)

    -今までに二人展やグループ展に比べると少し違う印象ですか。

    勝木:そうですね。二人展だと日本画の作家さんと一緒に展示をしたことがあるんですけど、その時は壁ごとに作家を完全に分けていたので、今回の展示のようにごちゃまぜで作品を置くっていう経験はなくて新鮮に感じました。
     でも今回こうやって展示をしてみると思っていたより馴染んでいて、いい展示になったなと思います。

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    中央の作品は勝木さんによるシルクスクリーン作品

    -共に展示空間を作りながら作品の印象に変化は感じたりはしましたか。

    ヒロセ:勝木さんの作品は激しい線の動きがあるので、まるでyugeの壁と壁を跳ね返りまくっているような躍動感が、作品の配置でより出てきた気がします。

    -確かに今回の展示は空間に対して均等に作品が配置されるというよりは、あちこちに作品が動き回っているような配置の仕方ですね。

    ヒロセ:それに勝木さんの作品が動き回ってるような配置をしているのに対して、僕の絵はドンとそこにあるようなどっしり感があるので、そういった抜け感と詰め感のバランスもいいかなと思いました。

    -勝木さんはいかがでしたか。

    勝木:私としては、ヒロセさんの作品のキャラクター性が強いので、作品のインパクトに負けてしまうかなと思っていたんですけど、今ヒロセさんが言ったようにいいメリハリになったので良かったです(笑)
     あとヒロセさんと一緒に自分の作品見る事で「自分の作品って激しさとかだけじゃなくて可愛らしさもあるんだな」と思いましたね。

    ヒロセ:勝木さんの作品って、一見してみると激しい線の構成なんだけど、じっくり見るほどサンプリング元が少し見えてくる面白さもあっていいですよ。

    -お二人の作品は生でじっくり見るほど面白い作品になっていますよね。
    シルクスクリーンだとインクの層が感じられり、ペイント作品も絵具の塗り方に工夫されていたり、画面の情報量の多さもそうなんですけど、パンチのあるビジュアルだけどじっくり見ても楽しめる作品だと感じました。

    勝木:そうですね。わんさかと賑やかな展示にはなっているんですけど、じっくり楽しんでもらうこともできる。ふざけているけど真面目、みたいな展示ですね(笑)

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    話す勝木さん

    -互いにカートゥーンアニメーションが影響の一つにあるとの事ですが、同じカートゥーン好き同士の展示で改めて影響を感じるところはありましたか。

    ヒロセ:勝木さんの作品は絵柄にカートゥーンらしさが出てるんですけど、僕の場合はあんまり出てないと思うんです。むしろ絵柄に関してはSEGAのゲームとかコロコロコミックのギャグ漫画からの影響が強くて、僕がカートゥーンから受けてる影響っていうのはキャラクターのデザインというよりは、あのひょうきんさや物語のシチュエーションとかかもしれないです。

    勝木:私もカートゥーンのひょうきんな雰囲気は好きなんですけど、あのキャラクター性というよりもアニメーションの動きに惹かれているんですよ。
     画面にレイヤーを重ねていく感覚は、むしろキュビズムや未来派からの絵画的な影響が大きいです。

    ヒロセ:僕はカートゥーンの世界観からの影響があるけど、勝木さんの場合はカートゥーンのアニメーション技術からの影響を受けているみたいな。

    勝木:たしかに!おっしゃるとおりです。

    ヒロセ:あと今回勝木さんのドローイングも多く展示してあるので、どれだけ勝木さんがアニメーションを見ながら線を集めてきたのかっていうのを感じ取って欲しいです。僕はあれを見てえらく感動しましたね!線へのこだわりを感じました。

    勝木:ありがとうございます!

    -お二人共作品を生で見た時の面白さが特に強いと思うんですが、どういったことに気を使いながら制作していますか。

    ヒロセ:実はこれからはもう少しエッヂの効いた作品も作りたいなと思ってきているんです。今の作品はカラフルなものが多いんですけど、もっと色数を減らしてみたり、アウトラインを無くしてみたり、転換期なんですよ。その分いろいろと絵のタッチであったりスプレーを使ったり試しながら作っています。

    勝木:私は今まで作品を額装していたんですけど、なんだか作品を閉じ込めているみたいで嫌だったんですよ。
     印刷をずらしてみたり、インクの層が重なっている感じとかがシルク作品の面白いところだと思うので、生で見て欲しいと思いながら作っています。写真だと全然違う風に見えるなと思うので。

    -勝木さんは以前壁に直接作品を刷るなどもしていましたが、それはやはり作品を額装から解放したいという気持ちの延長だったんでしょうか。

    勝木:そうですね。見にきた人が作品を体感してほしいと思っているので、気がついたらどんどん作品が大きくなっちゃいますね。

    -ヒロセさんの作品は額装せずにパネルのままのものがほとんどですよね。

    ヒロセ:そうですね。パネルが昔から好きで、あの厚みから出る物体感が欲しいんですよ。額に入れると急に「絵」になるというか、テレビゲームのモニター画面を書いているような感覚で絵を書いているので、その物体感をなくしたくないんです。

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    コンクリートブロックに立てかけられたヒロセさんのペイント作品

    ヒロセ:なので額装をする時はあえて額に入れるって感じですね。今回もドット絵を表彰状を入れるような額に入れてみたり。多分ドット絵がこんな額に入ってる事あんまりないんじゃないかな。

    -ヒロセさんが平面作品を面ではなく物体として展示している感覚は今回特に感じられますね。

    ヒロセ:そうなんです。僕は絵と家具はほぼ一緒な気がしていて、当たり前に家にある家具と同じように絵を見ているので、たまに道に捨ててある絵とか凄く好きなんですよ(笑) 乱雑に物を置いてるような感覚で、当たり前に絵がそこにある事にカッコいいなと感じます。

    勝木:私も「作品です!」という見せ方よりも、部屋に貼ってあるポスターのように見せてみたいという気持ちもあったので、今回の展示はやりたいことができて良かったなと思っています。

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    話すヒロセさん

    -お話を聞かせていただいて、やはり生で作品をみていただきたいなと改めて私も思いました。
    では最後にお互いの作品の見所をよろしくお願いします。

    ヒロセ:じっくり生で作品を見るほど面白いと思います。シルク作品だとよく言われる事ではあるんですけど、黒と黒のインクの重なりって生で見ないとわからないんですよ。網点の見え方も作品と鑑賞者との距離によって違うので、写真ではなく実際にこの会場を歩きながらその工夫に気付いていって欲しいです。

    勝木:ヒロセさんの作品は大きいので、そのサイズ感を含めて実際に楽しんで欲しいです。可愛らしいキャラクターとそのストーリーを想像しながら隅々まで見てしまうと思います。何よりパネルの側面にもこだわりが感じられるので、そこも是非見て欲しいです。

    ヒロセ:側面は写真じゃ見えないですからね(笑)

    勝木:あとヒロセさんは使いたい色を使ってる感覚が伝わってくるのもいいんですよね。

    ヒロセ:そうです、そのとおりです(笑)
     ノートに絵を書いている時の感覚とパネルに書いている時とで、割と気持ち的には変わらないんですよね。

    -作品から無邪気さが溢れていますね

    ヒロセ:描きながら「ここはこうしたら面白いな」って思いついたことをどんどんやってます。

    勝木:うらやましいです。

    ヒロセ:勝木さんの作品はシルクのこだわりも感じさせられるんで。ほんとに生で見て欲しいですね。

    勝木:そうですね。生で見にきてください。

    -ありがとうございました。

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    -勝木有香

    【経歴】
    1996 8月18日生まれ
    2019 嵯峨美術大学 芸術学部造形学科版画・写真領域卒業
    2019 嵯峨美術大学 大学院芸術研究科複合領域 在籍
    2019 「第63回CWAJ現代版画展」入選
    2019 「第7回NBCメッシュテックシルクスクリーン国際版画ビエンナーレ展」 入選

    【個展】
    2019「TRACE MOVEMENT」galleryそら
    2019「TURN ROUND AND ROUND」Kunst arzt

    【グループ展】
    2018「ワガハイ展」galleryそら
    2018「summer group show」the blank gallery
    2018「SUGADASH」Art space MEISEI
    2018「二人展」galleryそら
    2019「HANKYU ART FAIR」NeoSEED

    【受賞歴】
    2019 「第63回CWAJ現代版画展」審査員特別賞
    2019 「第44回全国大学版画展」優秀賞・町田市立国際版画美術館賞

    【パブリックコレクション】
    2019 町田市立国際版画美術館

    -颯ヒロセ

    【経歴】
    1997 1月24日生まれ
    2019 京都造形芸術大学情報デザイン学科イラストレーションコース卒業

    【主な展示】
    2019 「PARA Part2」 Alternative space yuge
    2019 「BLINDERS 2019」gallery Le Monde
    2019 「HILLS ZINE MARKET 2019 ART&ZINE」六本木ヒルズ A/Dギャラリー
    2019 「Here is ZINE Tokyo 19」TOKYO CULTUART by BEAMS
    2019 「東下」rusu

    【受賞歴】
    2019 京都造形芸術大学卒業展 奨励賞受賞