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  • ジオラマシーン 作家インタビュー 横山充 × 米村優人

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    京都下鴨のオルタナティブスペースyugeにて3/22から3/29に開催されている展示「ジオラマシーン」

    両名ともに京都で活動する若手作家。陶芸作家の横山充と、現代美術家の米村優人はそれぞれ怪獣や特撮ヒーローに幼少期影響を受け、現在ものづくりへ至りました。
    怪獣とヒーローの関係は対立のようで鏡合わせでもある。
    精神や身体に染みつく記憶を混ぜ合わせる装置として立ち上げられた本展示に、企画者であるコニシムツキがインタビューを行いました。

    是非展示と一緒にお楽しみいただけたらと思います。

    インタビュー:コニシムツキ(yuge運営・企画/hogeメンバー)

    ジオラマシーン 作家インタビュー 横山充 × 米村優人

    -二人とも京都の作家さんですが、展示以前の二人は接点はありましたか。

    横山充(以下横山):面識はなかったですね。米村さんの卒業制作を去年見ていました。空間の作り方がうまかったんです。スペクタルというか迫力のある空間構成に凄くシビれたのを覚えています。
     だから一緒に展示をすることになってかなり緊張しましたね。憧れに近い感覚で見ていたので嬉しかったです。

    米村優人(以下米村):僕も同じように横山君の作品は何度か見ていて、割と近い感覚の作家だと思っていたのでコニシから横山君との展示のオファーをもらった時から「面白そうやな」と思ってました。
     今言ってくれたように僕は空間で見せる作品が多いので、一つの作品で成立させるって手法はあまりやってないんです。それに対して横山君は一つの作品で大きな力を持っているなと思っていたので、そこのバランス含めてどういう風に展示を作っていこうかと楽しみでしたね。

    -互いにすごくポジティブな印象からのスタートだったんですね。

    米村:ポジ寄りのポジですね。

    -でもたしかに二人が初対面の打ち合わせの時からすごくスムーズにアイデアをラリーしている印象がありましたね。

    横山:そうでしたね。すごくやりやすかったです。

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    2メートル半近くある米村さんの巨大な脚の作品

    -今回は互いに怪獣やヒーローに幼少期から影響を受けてものづくりをしているという括りで二人に声をかけさせていただいたんですが、そこ以外でも二人が制作において持っているコンセプトについて聞かせていただけますか。

    米村:僕は「超人造」と名付けた作品を作ってますね。ちなみにこの「ちょう」は「超絶」の超でも「彫刻」の彫でもいいんですけど。
     横山君がみたと言っていた卒業制作での作品とかでは「合体」「変形」をキーワードにした作品で、彫刻を作るプロセスである削る行為であったり粘土を盛っていく行為を、幼少期に触れていたおもちゃにあるような合体や変形のギミックと同列に扱っているんです。そしてそれをいわゆる彫刻的な素材である粘土や石、樹脂によって作り出して、それを「彫刻」と呼ぶのかどうかを考えていくといった作品ですね。

    -米村さんの卒業制作での作品は、大型の彫刻機材をも作品の一部として組み込んでいましたね。

    米村:そうなんです。既製品を作品に取り入れることは当時は結構意識的にやっていました。でもこの展示を含めて最近ではあまり既製品を使っていなくて、什器も自分で作ることを重視し始めていますね。そこからも彫刻を作り上げていくプロセスが見えてくるかなと。
     僕の場合だと既製品との組み合わせに頼りすぎると、既製品が強く出過ぎるなと思うことがあって、簡単にそれっぽくはなるんだけど、やっぱり難しいんです。なので今回横山君の作品を見ていても、いい塩梅で作品と什器の関係や既製品の取り入れ方を実践しているなと感じさせられましたね。

    -たしかに横山さんの作品は既製品を作品のパーツのように組み込んでいるのが大きな特徴の一つだと思うんですが、やはり意識的に工業製品を陶芸作品に取り入れているんでしょうか。

    横山:僕はあくまで自分の手で作り上げるものに主軸を置いているので、そこに大量生産の工業製品の形を混ぜることで、手作業の形が際立つんじゃないかと思って意識的に取り入れていますね。手作業から生まれる形の歪みであったり、自分の手から一度離れて窯に預ける過程で出てくる釉薬の溶けかたであったり、そういった工業製品にとってはある意味ノイズのような要素を見せたいので。

    -既製品との組み合わせはあらかじめ決めてから制作をするのですか。

    横山:焼き物が出来上がってから考えていますね。

    米村:僕も作品同士の組み合わせは出来上がってから考えるのでわかりますよ、その感じ。

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    単管パイプを繋ぐ金具を使用した横山さんの作品

    -横山さんはコンセプトについて「遊び」という言葉をキーワードをしている話を以前していましたね。

    横山:そうですね。僕は元々グラフィティが好きで、ああいった作品が持っている「個の遊び」みたいな感じにすごく惹かれるんです。
     今回出した作品でも皆が通ってきた遊びの中にあった精神性をテーマの一つにしていて、ボードゲームやテレビ、ギミック付きのおもちゃと向かい合っている時の精神性を自分の作品を通しても感じてもらいたいなと思っています。

    米村:たしかに感じます。

    -どこか無邪気な感覚というか、愛嬌のある作風はそこから生まれるものだったんですね。

    横山:過去の作品で、陶器で作った石を鑑賞者に賽の河原のように積んでもらうというインスタレーションがあったんですけど、それも遊びの感覚を作品に取り入れたくて生まれたものです。
     自分の作品のコンセプトをきちんと話せるようになったのは最近になってからなんですけど、この遊びの感覚という言葉が見つかってからは自分の作品に対して過去のものも含めてしっくりくるようになりましたね。

    米村:わかります。僕も作品についてを言葉にするのは得意じゃないんですけど、一つしっくりくる言葉を見つけることができたら、作る作品の柔軟さって一気に変わっていきますよね。キャパシティが増えるというか。

    -作品展開のしかたが見えてくるんですね。

    米村:そうなんです。ひとつの一貫性が生まれる分できることが増えていく感覚がありますよね。

    -米村さんの作品も無邪気にのびのびと作品を作っているように見えるんですが、作品ができるまでに詰まってしまったりとかはあるんでしょうか。

    米村:展示とかの予定があればそこに向けてのびのびやっているんですけど、それが終わるとやっぱり詰まることはありますね。作り出したら無心で進めていけるんですけど、僕はあまりドローイングを書いたりもしないんでだいぶ動き出すまでの腰は重いですよ。

    -手を動かしてしまえば集中して進んでいくタイプなんですね。

    米村:そうです。今回出している巨大な脚の作品も累計だったら三時間くらいだったかもしれないです。

    横山:ええ、はやくないですか。

    米村:他にも同時進行でパーツを作っているんで、大量の樹脂を炊き出しの鍋みたいな量で準備して一気にやるんですよ。硬化剤を入れたら固まるまでに造形しないといけないので、グワーっとやってしまうっていう。

    横山:そうか、樹脂もそういう制限があるんですね。

    米村:でも作り始めるまでは全然ですよ。「作らないとヤベーな」と思いながらタバコ吸ったりして、気合入れて作業場に行っても喫煙所いって「ヤベーな」って(笑)

    横山:いやいや、わかりますよ(笑)

    米村:時計見て「もうこんな時間か」ってなってやっと作る感じです。

    -追い込んで追い込んで制作をしてるんですね(笑)

    米村:自分では追い込んでるつもりないんですけど、勝手に追い込まれてますね(笑)

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    話す横山さん

    横山:僕も米村さんと同じようにあまりドローイングをしたりエスキースを練ったりはしない方ですね。構想はしっかり考えるんですけど、あまり完成像をはっきりとさせすぎると、一度手放して窯に委ねる陶芸だと「エスキースの方が良かったな」となってしまうこともあるので。

    米村:でも今回出してるドローイング作品すごくいいですよね。横山君の作風をうまいこと平面作品に落とし込んでる。

    横山:あのドローイングは陶芸でやっているプロセスを、平面作品での表現でも使えないかと思って制作したものですね。
     陶芸にある粘土をカンナで削って形を整えていく過程を再現したくて、アウトラインを太めに描いたものを、後から背景色で必要な輪郭だけを残して削りとっていったんです。

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    横山さんのドローイング作品

    -お互いに向き合っている作品のプロセスを大切にしていますよね。そこも含めて作品に昇華させようとしてるんですね。

    横山:陶芸は自分ではコントロールしきれないですからね。粘土が重力から受ける影響だったり、窯の中で起きていることだったり。

    米村:それでいうなら僕はコントロールしようとしまくってますね。一度出来上がった作品も気に入らなくなったらまた上から樹脂を重ねて作りかえていったりもします。

    横山:こっちは釜から出した後はあまり作り替えることができないので少し羨ましいですね(笑)

    米村:でも樹脂も硬化剤との反応で色味が予想外に仕上がったりもするので、僕もそのあたりは素材に委ねているかもしれないです。 
     面白いですね。素材によってそれぞれ全然違いますからね。

    -横山さんは粘土以外にこれから使ってみたいと思っている素材はあるんですか。

    横山:僕は木彫で作品をつくたいなとずっと思っていますね。

    米村:ああー、横山君の木彫みてみたいですね!

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    話す米村さん

    -共に展示空間を作っていくのはどうでしたか?

    米村:たのしかった!(笑)

    横山:たのしかったですね(笑)

    -たしかに楽しそうでした(笑)

    米村:いろいろ試しながらでしたね。

    -作品の配置なども我々で話ながら何パターンも実際に試してみてという具合でしたね。

    米村:僕の巨大な脚の作品も最初は寝かしておく予定だったんですけど、横山君が「これ立つかなぁ」と言うんで立たせてみたら無茶苦茶良かったんで、これにしよう!ってね(笑)

    横山:搬入終わって展示空間眺めていても「やっぱ良いなぁ」って思いますね(笑)

    -サイズ感のメリハリも効いて、うまく互いに引き立てあってる展示になりましたね。

    米村:奥の方にある作品の並びも、撮影のスタジオっぽくなっている僕の作品の横に、横山君のテレビの作品があるのがすごく気に入ってるんですよね。

    横山:グルーヴ感というか、うまく噛み合った感覚はありますね。

    米村:今回の展示で、横山君と年1とかで定期的に展示やりたいなと思いましたね。控えめに言っても好きです。

    横山:僕もです(笑)

    米村:じゃあ今日が二人の記念日ですね。

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    左手前が米村さんの作品、右手奥が横山さんの作品

    -では最後に本展示での互いの作品の見所を教えていただけますか。

    米村:やっぱり横山君の作品は、陶芸作品と工業製品との組み合わせを楽しんで欲しいですね。その素材感とかは実際に見てもらうのが一番実感してもらえると思うので。

    横山:米村さんの作品はそのスケール感を見て欲しいですね。とにかくでかいので(笑)

    米村:こんなにデカかったっけなって僕も思ってます(笑)

    -立体作品同士だからこそのグルーヴ感というか、空間で共鳴しあっているエネルギーを感じて欲しいですね。

    米村:そうですね。このスケール感、素材感をこの場所で体感して欲しいです。会場に来てくれた人が幼少期の記憶や感覚を僕らの作品を通して思い出してくれれば、それがジオラマシーンになるのかなと思います。

    横山:そうですね(笑)

    -ジオラマシーンになるんですね(笑)

    米村:そうです。あの頃にジオラマシーンしてくれればと思います。

    -ありがとうございました。

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    -横山 充 Yokoyama Mitsuru 

    【経歴】
    1998年 大阪府東大阪市生まれ
    2016年 京都精華大学陶芸学科 在学中

    【主な展示歴】
    2019 「アールシー陶器市」(RC HOTEL京都八坂/京都)
    2019 「石フェス!」(アトリエ三月/大阪)
    2019 「Tokyo independent」(東京藝術大学陳列館/東京)
    2019 「ニゥ」(yuge/京都)
    2019 「KAI・JU」(BABABAbamboo /京都)
    2018 「SEIKA JACK」(ギャラリーフロール/京都)
    2018 「肉屋草屋」(VOU /京都)
    2017 「陶突」(名古屋栄三越/愛知)

    -米村 優人 Yuto Yonemura

    【経歴】
    1996 大阪府大阪市生まれ
    2019年 京都造形芸術大学 美術工芸学科総合造形コース 卒業

    【主な展示】
    2020 「Artist Fair KYOTO」(京都新聞社ビル / 京都)※展示予定
    2020 「EUKARYOTE GROUP SHOW」(EUKARYOTE / 東京)※展示予定
    2019 「アートアワード丸の内2019」(新丸ビル / 東京)
    2019 「OBJECT AND MIND:彼女とはもうバロロームできない」(京都造形芸術大学 ギャラリーオーブ / 京都)
    2019 「KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号」(東京都美術館 / 東京)
    2019 「2018年度京都造形芸術大学卒業作品展・修了展」(京都造形芸術大学 瓜生山キャンパス / 京都)
    2018 「チョウコク-論」(Finch Arts / 京都)

    【主な受賞歴】
    「2018年度京都造形芸術大学卒業作品展・修了展」優秀賞 受賞