2023年2月10日に投稿した「Right on Time【城ヶ崎美嘉】」について、制作時のことをメモとして残しておこうと思います。いつも通り技術的に役立つ情報はありませんのであしからず。
①作品の主題と決定まで
本作はニコマスイベント「MADLIVE EXH!!!!!³」出展作品であったため、制作するにあたり他のニコマス制作者の方々と意見を交わしながら作品の方向性を決めていったのですが、その中で自分が今まで作ってきたモーショングラフィックス中心のBGA的映像ではなく、もっとアイドルに焦点を当てた、よりダンスを中心に魅せられる作品を作りたいと考えるようになりました。しかし作ったことのない作風を構想しても、なかなか具体的なイメージができないまま時間が過ぎていきました。
そんな中、たまたま見に行った映画「エルヴィス」でステージライトを背景に歌うシーンがあり、そのカッコよさとシンプルでありながら一挙手一投足に引き込ませる演出の巧みさに感動し、これを参考にして映像を作ろうと思いつきました。
きらびやかに輝くスクリーンとステージライトをバックに踊る。眩しさと華やかさを軸に表現したいと考えて、動画の構想をスタートさせました。
また、せっかくスクリーンを背景にするならばそこでモーショングラフィックスを表現し、音に合わせた映像の気持ちよさを出したいなとも考えました。いわゆるVJの映像です。激しい点滅と動きによってフロアを盛り上げる、そんな映像を作ろうと試みました。参考としてDJライブやバンドの映像をかなり見ましたが、VJの映像はあくまで主役を引き立てる脇役であるため、それをじっくりと見せてくれる映像は多くありませんでした。それでも僅かに見えた部分からどのような作風かを考え、本作に反映させています。
②制作過程
本作は基本的に「スクリーンの前で踊る」という映像が1分40秒間続くものであり、言うなれば似たような構図が最初から最後まで続く構成になっています。当然、同じような展開が続けば見ていて飽きますので、どのように変化をつけるか、飽きさせずに最後まで見てもらうか、工夫が必要になってきます。
映像の構図上、変化をつけられるとしたら
- キャラクターとカメラの動き
- バックスクリーン
- ステージライト
- キャラクター上部の照明
の4つであり、それぞれを分けて考え、制作することで変化のある構図になるよう努めています。
特にバックスクリーンに関してはキャラクターに準ずる注目要素だと考え、音と映像の同期やVJ的なモーショングラフィックスの映像など重点を置いて制作しました。シンプルかつ幾何学的な模様の動きであればわずか数フレームだけの映り込みでも動きと形を認識やすくなるので、冒頭は印象重視に作成しています。対してキャラクターが登場した後は過剰に目立つことを避け、比較的単調な動きの映像にしています。あくまで最も注目を集めるべきはキャラクターなので、メリハリのきいたバックスクリーンの使い方を模索しました。
ステージライトはシェイプレイヤーを使用し、キャラクターを照らす上部照明も調整レイヤーで作成した疑似的なものですが、単純な組み合わせゆえに管理が楽なので音合わせを重視する観点でいえば正確な3Dを作成するよりも扱いやすかったです。ただそれだけだとどうしてもチープな感じが否めなかったので、一瞬ですがステージライトの本体を見せるシーンを導入しています。光線(ライトの光)は、本当はSaberや3Dstrokeといったプラグインで作りたかったのですがうまくいかず、ピンク色の円柱にグローを重ねまくるといった力技でなんとかしました。映るのは一瞬なので許容範囲かなとは思いますが、わかる人が見たらちょっと変なシーンになったかもしれません。
自分は作品内にキャラクターを象徴するオブジェクトやマークを人物の代替として登場させる手法が好きなのですが(以前の動画ではライラ=曼荼羅模様、塩見周子=家紋など)、今回は城ヶ崎美嘉ということでタトゥーマークを象徴として使用しました。攻撃的・小悪魔的な印象を付けられるタトゥーマークは今回の曲調にもあっており、ハートや翼をメインとしたマークを複数作成しました
スクリーンは電球風ドット表現をしているため、あまり細かなデザインにしてもつぶれて見えなくなってしまいます。なので大雑把なデザインにとどめています。また、後で動かすことを想定しパーツごとに分解できるようにしています。こういうのを作っている時が一番楽しい。調子に乗ってかなりの数を作りましたが使用したのはごくわずかでした。
カメラの動きについては、デレステの仕様上同じ高さでの回転しかできないため、上下のカメラ移動は実質不可能です(ARを使用すればある程度は可能ですが背景のキーイングが困難になります)。なのでどう視点を動かすかは視聴者を飽きさせないためにも非常に重要なポイントです。本作ではステージの反対側(客席側)は作っていないのでカメラを一回転させてキャラクターの背中側を見せることができません。そうなると左右180度しか可動域がなく、さらに動きに制限がかかります。そういった制限をなんとかごまかすためにも、バックスクリーンやステージライトの演出が大切になってきます。
キャラクターの回転によるカメラ移動以外にも、カメラの動きによって見せ方に緩急をつけることは可能です。キャラクターが正面を向いている状態でカメラをパンさせたり、斜めにすることで画面に変化が生まれます。
上のシーンは場面転換をいかにスムーズに見せるかで苦労した部分です。一回転するという一連の動作ですが、カメラの高さが異なる3カットに分けて音あわせと視覚的変化を強調しています。またカメラの動きを次のシーンにスムーズにつなげるために前のシーンから予備動作を始めておくことで、一瞬の切り替わりでもあまり違和感なくつなげることができます。ここでは腕の動きをカメラ移動の基準とすることで、異なるカメラ位置においても視線移動に無理がないように設計しています。(ついでに上部照明も右から左に移動させることでスピード感をつけています)
③終わりに
「Right on time(ryu☆ remix)」はノリのいい曲ですがBPMは意外と早くなく、音合わせはやりやすい曲ではありました。それでも1フレームごとに根性で音と映像を確認していく作業はいつものことながら体力がいります。今回はイベント出展作品ということもあり〆切という恐怖と戦ったために気力が続きました。とにかく完成させられたことに安堵したのが正直な感想です。
ライトラップ(背景の光が前面の被写体のフチに映りこむ演出)処理が非常に重たく、自分のPCスペックの影響もありますがレンダリングにとても時間がかかりました。これがないと合成のなじみ方に雲泥の差があるのでどうしても必要ではあったのですが、可能なら二度とやりたくない…
(ライトラップ適用の有無で雰囲気にも差異が生じる。同じコンポジションを複製して合成させるためレンダリング時間が倍かかるのがネック)
もともと本作は全く別作品を作る予定でしたが、他の方々との意見交換によって誕生した作品でした。自分だけではこの作風は思いつかなかっただろうと思います。イベント関係者や協力してくださった方々に感謝いたします。