なぜPGMはDFMを完封するに至ったのか BAN/PICKから読み解く
2018年4月14日、レギュラーシーズンを無敗で勝ち上がってきたDFMと、対照的に苦しんだシーズンを送ったPGMとの決勝戦は誰しもが予想もしていない結果で幕を閉じることとなった。3戦を通してDFM側はたった一つのタワーも破壊することができず、覇気なく終戦を迎えたが、それほどまでに両チームには差があったのだろうかといえば疑問が残る。
また同じコンディションで試合をすれば、また違う結果弾き出されることは想像に難くない。
B/Pから、LJL前半シーズンの締め括りであるBo5を読み解いていくこととする。
Midから動きたかったDFM、咎めるのはPGM
まず、構成を読み解くときに必要なことは、どう言った勝ち筋を想定し、また相手の勝ち筋を妨害していくかである。
DFMの選んだチャンピオンはそれぞれ、オーン、セジュアニ、タリヤ、ケイトリン、アリスターという組み合わせで、タリヤがサイドレーンに影響を及ぼすことで、大きな有利を作り出すことができる。また5:5の集団戦を見据えたときにも、強力なCCを備えており、集団戦でのタリヤのダメージも十分に補える見込みはできていた。
ただし、このチーム構成の懸念すべきところは、タリヤがサイドへ流れるという目標が達成できなかった場合、大きく苦しむだろうということが容易に想像できてしまう。
対してPGM側の採用したチャンピオンはナー、オラフ、シンドラ、ヴァルス、ブラウムというチャンピオンで、DFMの選んだ構成の長所を消した。
タリヤのロームを抑えるため、ウェーブクリアに長け、またレーニングでの1VS1に強いシンドラと、少数戦に強く、またJungleクリア速度に優れたオラフが縛りつけることで、 マッチアップで有利なナーがオーンを抑えつけることで試合展開を有利にする目論見が読める。
また、ブラウムのピックにより、オーンのアルティメットや、バックラインへのアリスターの飛び込みにも対処することが可能で、複数の役割を持てるヴァルスも有効に見える。
1戦目に関しては、PGMがB/Pで優位に立ったと判断した。
修正力を見せたDFMと、リスクを負ったPGM
一戦目を終えて、DFMは修正を計った。
選んだチャンピオンは、オーン、トランドル、タリヤ、カイ=サ、タリック。
脆弱だったMidとJungleのラインを整えなおし、また強力な対抗策として選ばれたシンドラにBAN枠を割くことで、本来の目的を達成することを望んだ。
それに対してPGMが選んだチャンピオンは、ナー、オラフ、エコー、ヴァルス、アリスターとスプリットプッシュに長けたチャンピオンを取り、ウェーブクリアやディエンゲージをオラフとアリスターで補うことで、1:3:1の形を作りやすい構成を選んだ。
DFMはタリヤがサイドを助け、自分たちが強い時間帯を迎えるまで待ち続ければ良く、対してPGMは先にタワーを破壊し、視界コントロールを奪い、スプリットプッシュの体制に入らなければ、試合に勝つことは難しい。
試合結果は一先ずおいといて一戦目に比べて、PGMが高いリスクを負わされたと言って良いだろう。
2試合の経験値が反映された3戦目
BO5などの長いレギュレーションの場合には、BAN/PICKの傾向が変わってくる場合があり、3戦目はそれが反映された試合だった。
DFMの選んだチャンピオンはガングプランク、オラフ、ジグス、ジンクス、ブラウム。
この構成の勝ち筋は明快で、受け身に戦いながら、5:5での集団戦に勝利し、逆転をするという構成であり、ジグスはゲーム時間を延ばすのに長けているのに加え、タワーを破壊する能力も高く、また、キル回収能力の高いジンクスがジグスやガングプランクの与えたダメージからスノーボールすることで、勝利へのロードマップは描いた
対してPGMはナー、トランドル、ゾーイ、ケイトリン、タムケンチを選択。
とくにタムケンチのpickは、チームに機動力をもたらし、また、AOEダメージからチームメイトを救うことでハードイニシエーターを取ることができなかったDFMを大いに苦しめた。
長い時間を耐え忍んだDFMには、最後までチャンスが訪れることはなかった。
選手のコンディションは一定ではないということ
前評判の高いチームが呆気なく敗退することや、信じられない結果に終わることは、スポーツを関するものであれば枚挙にいとまがない。試合中の一つの判断ミスがそのまま敗北に直結し、メンタルをリフレッシュすることができないことも多々起こりえることで、そういったテンションが影響を及ぼしているかどうかは外部からの判断は難しい。
サッカーなどのスポーツでは、メンタル専門のコーチが置かれる場合も増えてきており、選手に器具を付けてのメディカルチェックも行われているが、この試みがeスポーツにも波及しきっているとは言えないため、データ化して判断材料にはし辛い部分ではある。
しかし、悪いイメージが頭の中に残り続けている場合に、アグレッシブなプレイに繋げることができず、パッシブに受け身のまま試合が推移していく。
試合後のインタビューなどでは、自信を持ったプレーが出来ていたかどうかを勝因に挙げるプレイヤーも多い。
一般的に、プレイヤーのメンタルは二種類に分けられる。一つは直感的に、感じたままにプレイをしていく選手。ダメージディーラーを求められる役割のADCやMidのプレイヤーは、こちらのメンタリティを持つ選手が多い。アグレッシブにプレイし、ダメージが出せるタイミングで勇気を持ってプレイすることが求められる役割だ。
もう一つは理論的に考えてプレイする選手。JungleやSupportの選手はこちらのほうが適正があると言える。常に取捨選択を求められる役割に置かれたとき、一つのミスに固執してしまえば、状況は悪化していくばかり。素早い切り替えが求められる。
TOPレーンの選手は、ファイターが得意な感覚的な選手、タンクが得意な理論的なタイプという大雑把な分け方で捉えてしまっても良いのではないだろうか。
それを踏まえて、私が注目したいのは、Evi選手の特性についてである。
Evi選手は感覚的に鋭く、相手のウィークポイントを突くのが非常に上手い選手で、PGMは徹底的にカミールやフィオラをBANすることで、その対策を行った。Paz選手は器用な選手で、これまでもLJLシーンで複数のロールを経験してきた実績もあり、ガングプランクなどの耐えるレーニングを必要とされるチャンピオンも非常に得意だ。
チーム構成を考える際に、メタに沿ったチャンピオンを取っていくのか、選手の特性に合ったチャンピオンから選んでいくのかというのは、これが正解であると断言するのは危険な考えだろう。
強かったDFM、這い上がったPGM
レギュラーシーズンを無敗で駆け抜けたDFMは、間違いなくLJLで最も強いチームだったと考えている。戦略面戦術面も成熟しており、明確な勝ち筋を意識したB/Pは、わかっていても対処が難しい。
ならばなぜ、PGMがほぼ完ぺきと言える勝利を収めることができたのだろうか。
私個人の考えでは、PGMへの戦力評価が定まっていなかったのではないかというのが一端にあるのではないだろうかと考えており、それが一戦目のBAN/PICKに繋がったのではないだろうか。
セジュアニを取らされた形とはいえ、タリヤを生かす形であれば、自らトランドルをBANする必要は薄かったと考えていて、実際に2戦目3戦目ではトランドルはオープンになり、それぞれpickされている。
タリヤがサイドに影響を及ぼさなければ勝ち筋を見出すのが難しい形でありながら、それができなかったのは、多少なりとも、DFMが長所を消す形での試合を受けても、勝つ自信があったのではないだろうかと邪推してしまう。
PGMはシーズン序盤からコミュニケーションエラーが目立つシーンが多々あり、それが試合を重ねるうちに修正され、セミファイナルもほぼ完ぺきな試合運びを見せた。
それでも、DFMが勝ち抜くだろうという予想は私自身もしていた。
しかし、四連覇を虎視眈々と狙っていた王者は下馬評を覆し、見事に苦しいシーズンをハッピーエンドで飾ることができたのだった。
奮起に期待したい、熱い夏へ
またも優勝を逃してしまったDFMではあるが、この敗退がチームの強さを決して貶めるものではなかった。明確な戦略基準が存在しており、選手たちのシーズンを通してのパフォーマンスも素晴らしかったと考えている。
PGMも、苦しいシーズンを送りながらも、一つずつ改善に努め、栄冠を手にした。
この二者の関係はLJLの黎明期から続いているもので、今度こそ新しい風を期待したいという気持ちも有り、同時に、新たな若い選手が目指す場になってほしいとも思う。
LJLに初参戦する日本人選手が今後増え、競争率が上がり、その結果、シーンが盛り上がることを期待したい。