KARASU no ZAREGOTO

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Skyrim不動産案内番外編:Wispwell Cabin

 それはだいぶ前に見つけた物件で、あいつに教えてやろうかどうしようか、ちょっと迷ったものだった。迷ったのは、正直なところ、俺が見た感じでは微妙な気がしたせいだ。
 選ぶのは客なんだから俺の好みなんてものはまったく関係なくて、どんな物件だろうととりあえず言っておけばいいと思う反面、売り物にはならんだろってものや、あの不動産屋のテイストじゃないものを紹介しても時間の無駄だとも思う。それで以前はスルーしてしまった。
 だが先日近くを通りかかったとき、まだあの家はあるんだろうか、まだ無人なんだろうかと、ふと立ち寄ってみた。
 改めて見ると、悪くないどころか、なかなかいいように思えたから不思議だ。
 そこで俺は、その家のデザイナーを探して少し話を聞き、なるほどそういうコンセプトだったのかと納得すると、あいつを誘ってイヴァルステッドに向かった。

 イヴァルステッドのあたりは、高地にあって景色がいいからか、複数の新築物件が見つかる。ダークウォーターの滝のところなんて二重に存在していて、住民はいったいどうしてるんだろうと思うくらいだ。
 その物件はイヴァルステッドの丁度北、一応は街道と言っていい道の脇にある。

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 旅慣れた人なら、元は門扉だったらしい柱と鉄の扉の残骸があるところ、と言えは分かるかもしれない。(FTばっかしてんなよ?)
 北のほうから山道をやってくると、この門扉の残骸を少し過ぎた右手側に、やがてその家が見えるはずだ。

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 Wispwell Cabinと名付けられたその家は、一応2部屋あるものの、ワンルームに近いようなこじんまりとした物件だ。デザイナーの話では、当人がこのへんの景色を好きだから、それを堪能しながらのんびりと暮らせるように、必要なものを詰め込んで、余計なものは省いたらしい。住人として想定したのは「ハンター」とのことだ。
 狩人といえば、俺にとっては武器、草花(錬金)、食料ってイメージだ。デザイナーにそう言うと、自分もそう思うが、必ずしもハンターが住んでくれるとは限らないから、付呪台は設置し、畑や肥沃土のような必要度の低いものは除いた、と言われた。
 実際、家に向かって右側には溶鉱炉、玄関脇に皮なめし台、そして左側にはそれ以外の鍛冶設備がある。
 だが俺が一番気になったし、この家のポイントだと思ったのは、樺の木(たぶん?)のそばにある小さなテーブルセットだった。こんなふうに天気のいい日なら、ちょっとした軽食と本を持ってきて、のんびり読書ってのも気持ちいいだろう。

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 それから、この家の一番のポイントはこれだ。鍛冶場の脇ある簡単な展望台で、

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 登れば360度のパノラマが展開される。
 南を向けば、ゲイル湖から流れてくる急流と、その脇をイヴァルステッドへと通じる街道が一望できる。ここにもテーブルはあるから、風のないあたたかい日にはこっちで一服つけるのもいいかもしれない。
 ……あっ!

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 ……あー……あれな。そうなんだよなぁ。北から川沿いのルートでイヴァルステッドに向かう場合、トロールの住処の傍を通るのが難点なんだ。で、この展望台から降りるときには、否応なく血まみれの惨状が目に入るっていう……。
 トロールにトラウマのあるツレは、それだけできゃんきゃんわめきはじめたが、なに、想定住民はハンターだ。トロールくらい物ともしない腕前の奴くらいいるだろう。それに、狩った獲物を解体したりするのも狩人の仕事だろ? だとすれば、獣の血なんて見慣れたものじゃないか? むしろここに住んでもらって、トロールが住み着くたびに退治してもらったっていい。そのときにはここは、展望台じゃなく監視塔になるわけだ。

 とツレをなだめておいて、とっとと家の中に押し込んでしまうことにした。

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 入った正面は炉、そして左側は錬金と付呪のテーブルだ。
 このデザイナーは、外の鍛冶設備を見ても分かるが、効率一点張りじゃない。そこまで気が回らないのか、それとも、こんな小さい家なんだから少しくらい歩いたっていいじゃないってことなのか、錬金・付呪台の傍には、専用の収納なんてものはない。一応近くにタンスはあるから、どちらかの素材は仕舞っておけるだろう。
 ちなみにここスペースには床がなく、土がむき出しになっている。まあ、敷物がぽいっと放り出されてはいるが。

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 隣は少しだけ高くなっていて、床も板張りの寝室だ。こっちには宝箱が2つあるし、枕元にはエンドテーブルもある。
 アカトシュの祠が祀られているのも珍しい。たしかマジカ関係の恩恵がもらえたはずだ。ハンターにマジカ? て気もするが、こまかいことはツッコんじゃダメだ。
 それから、机の上にある陳列ケースには、デザイナーからのプレゼントの一つ、付呪のされたダガーが入っている。ただしこのケース、専用の武器ケースではないから、取り出してしまったら他の武器をセットすることはできない。どうしてもなにか飾りたいなら、自力になる。
 試す時間がなかったから分からないんだが、たぶん、なにか置いておいてもなくなることはないと思う。ただし、帰ってきたら落ちていたり、変な場所に転がっていたりってことはあるのかもしれない。まあ、客に売る前にそのへんは少し時間をかけて確かめればいいだろう。
 ちなみにもう1つ、弓のプレゼントが溶鉱炉の傍にあるから、駆け出しハンターも安心だ。

 俺が最初に見かけたときには、テーブルなんかを置いた後の、埋まらなかったスペースに適当に箱なんかが押し込まれているようで、雑に感じた。それに、室内なのに地面むき出しだとか、適当に広げられただけの敷物とか……つまりは、全体的に”洗練されていない”というか、粗雑に見えたんだ。
 だが改めて見たときには、これはこれでいい、”味”なんじゃないかと思えた。
 誰も彼もが効率優先ではないし、誰も彼もがきちんとした整頓魔、きれい好きじゃない。こういうラフな感じのほうが寛げるってこともあるだろう。なにせデザイナー自身が一日で設計したってくらいで、「景色を楽しむ!」という以外にはこだわりや凝りってもののない、ざっくりした家だ。
 それに(筆者:まあ実際には無理なんだけど)、敷物くらい好きなものに変えればいいし、ちょっとしたリフォームならこいつの会社で引き受けてくれるだろう。
 要は、ある程度の設備と、立地、コンセプト、風情、そんなもののはずだ。
 戦利品のディスプレイには興味がなく、一通りの製作設備はあるといいが多少の不便は気にならず、このへんの景色が気に入った、静かに暮らしたい誰か。一応はスカイリムの中央近くにあるから、南回りでならすぐにファルクリースやホワイトラン、リフト地方に行ける。
 きっと買い手はいるだろう。

 それじゃあ俺は行くから、あとはゆっくり検分でもなんでも、と言うと、案の定、一緒に帰ると食いついてきた。もちろん、分かってて軽くいじってるわけだが。
 ま、イジリも行き過ぎればただのイジメだ。そんな意地悪は程々にして、イヴァルステッドの宿でここしばらくの旅の話でも聞かせてやるとしようかな。