KARASU no ZAREGOTO

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Skyrim不動産案内番外編:Crypt Of The Old Guard

 結局、ヴォルキハル城から盗まれたとかいう吸血鬼の秘宝は、探していた当人たちが見つけた。
 その宝はたしかに、「一つでも人の手にあってはおちおち眠れもしない」レベルの物ばかりだったが、だからこそ誰もほしがらなかった。ラムスカーのおっさんは、研究したいからと薬をいくらかもらったようだが、それでも自分で使うつもりは毛頭ないらしい。
 そんな話をすると、ラリスは「売ればいい金になるのに」と言い、セロは「万一のときのため、ダガーくらい手に入れておけばいいものを」と呆れた。

 俺たちが奇妙な場所を見つけたのは、そんな話をしていたからってわけではない、と思いたい。
 ちょっと用があってリフテンの南西、森の中を歩いていたときだ。お馴染みの唸り声がして俺たちはクマの存在に気づいた。刺激しなれば襲ってこないとか言われているのはまったくアテにならない。唸り声が聞こえるほど近くにいたら、それはもうイコール、奴等の許せない距離なんだから。
 撃退するのに手間は要らない。ただそのとき俺たちは、そのクマが出てきたくぼみに、エサにするつもりだったらしい鹿の死骸と、明らかに人工的な石組みを見つけた。

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 場所はこのへんだ。

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 井戸に蓋をしたような落とし戸で、木板の覆いは意外にすんなりと持ち上がった。中からは、湿気と黴と……なにか生臭いような、あるいは鉄の錆びたような匂いがした。
 危険なのは百も承知だが、なにがあるのか気にならないわけがない。それにこっちには、腕利きの傭兵が2人もついている。セロとラリスは呆れたが、俺に付き合って長い彼等は、俺に「行かない」なんて選択肢がないことはよく知っていた。
 穴の中にはハシゴがあった。深くはないようだが、底は真っ暗でよく見えない。だがこういうとき、俺は苦労しない。目を凝らせばぼんやりと、灰色と黒の陰影のようにして中が見える。
 それに耳も鼻も効く。だから俺は、中に2人ほど、俺たちを待ち構えて息をひそめている何者かがいることに気がついた。

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 襲ってきたので返り討ちにすると、どうやら2人とも吸血鬼のようだった。
 吸血鬼だとさ! 吸血鬼の客(二人目らしい)に、吸血鬼の宝、そして今度は俺が吸血鬼に関わる番なんだろうか。

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 ちなみに中がどれくらい暗いかと言うと、これくらいだ。松明や灯火系の魔法がなく、暗視もできないと、ろくになにも見えないだろう。

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 だが、すぐ脇のロウソクに触れると、なんの魔法だろうか。そのロウソクだけじゃなく、室内のものすべてに明かりがついた。
 だとしても暗い。それに、時刻が昼間とかだと、室内がどんなに暗くても松明をだそうとしないセロたちだ。暗視では本来の色なんかも分からないから、仕方なく俺は松明を点けた。

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 そこは小さな小部屋だが、ドーンガードの武具に、(ただし取れない)

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 なにやら死体まで。棚の上には薬なんかも並んでいる。(これも取れない)
 たったこれだけの、つまりはドーンガードの隠し保管庫かなにかだろうか? と思ったが、ラリスがたまたまもたれた背後で、なにかがガタンと音を立てた。

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 巧妙に壁に偽装した隠し扉だった。スイッチは、右脇にある燭台だ。ラリスはこれを押し下げてしまったらしい。
「入るんだろうな?」
「もちろん」
 こんな面白そうなところ、行かずに済ませられるわけがない。
 俺は、なにがあるのかわくわくしながら洞窟を下っていった。

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 出たところは、なんというか……広間のような、集会所のような、あるいはなにかの施設のような。無理やり言えば、「家」と言えなくもない場所だった。奥の正面には立派な棺が立てかけられている。
 どうやらここは、ドーンガードの保管庫のようでいて、その奥に吸血鬼の秘密の住処になっていたらしい。だが今は、入り口で出くわした二人以外には誰もいそうになかった。そしてあの二人は、こういう立派な設備の"主"とするにはみすぼらしい。

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 なにせ立派な書斎に、付呪の道具。

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 もちろん錬金台もあるし、脇の石皿(矢印)にはたっぷりとした血がこびりついていて、どうやらここで、吸血鬼の秘密の薬が作れるらしい。なんとなく持っててしまっている名称はあえて言わないほうがいい肉とか心臓とかが使えそうだ。
 しかもこのへんもすべて、ロウソクも篝火も、つけたり消したりできる。

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 当然のごとく鍛冶設備も揃っていた。皮なめしの台もあるし、青い炎が燃えているのはなにかと思ったら、溶鉱炉のようだ。

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 奥にはちょっとした陳列場所。
 興味津々で見て回っていた俺は、更にいくつかの隠し扉を見つけた。

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 一つは、中央の棺に向いて左側、2棹のタンスがある脇だ。壁にある金属の飾りみたいなのに触れると(触ったのはたまたまだ)、壁によりかかっていたセロが後ろに倒れて転んでしまった。背後の壁が、開いたというより消えたのだ。
 その奥には調理鍋があった。しかもこの鍋は、下の火を消すと使えなくなる。

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 更にその部屋の中に、さっき壁を消したのと同じような飾りが2つあったから、それにも触ってみると、どういう仕組か、コウモリの羽ばたく音と声がして、そこにあるものが、棺、普通のベッド、ベンチに変化するようになっていた。
 つまりここは、その気になれば誰かを―――それが棺好きな吸血鬼でも、普通のベッドがいい人でも―――泊めてやることができるし、寝ないときにはベンチにでもして、ダイニングにも使えるってことだ。
 更には、さっきあった2棹のタンスの内、片方はやはり隠し扉になっていた。背板が横にずれる、よくあるタイプのヤツだ。

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 その奥にあったのは、……まあ、貯蔵庫かなと最初思ったんだが……

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 うわー……これってつまり、吸血鬼用のごはんだよなぁ……。
 もう完全に洗脳されてるのか、開けてやっても逃げようとはしない。それに、ほとんどひとりごとみたいな嘆願を聞いていると(筆者:ということにしておこう)、彼等が死ねば自動的に新しい家畜が出現するらしい。いや、俺は絶対にそんなこと試す気はないが、しかし思ったのは思った。今ここにいるのはなかなかの美女二人だが、女吸血鬼ならイケメンのほうがいいんじゃないかとか、男吸血鬼でもそっちが好きな奴だっているだろうになとか。
 そういうときには、この可哀想な人たちをさくっとやれば、自分好みの誰かが出てくるかもしれないわけだ……。

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 で、彼女たちの向かい側にある鉄格子を開けて下りると、そこは格納庫になっていた。武器や鎧、弓類なんかを、それぞれ分けてしまっておけるようになっている。マネキンも3体。これまで見てきた場所にもあったから、防具を飾るのにそこそこの満足は得られそうだ。
 格納庫の壁の一部も、なんだか隠し扉になっているように見えたが、ここはどう探してもスイッチが見つからなかった。たまたまそう見えるだけなのか、俺が見落としたのかは分からない。
(筆者:作者さんの動画見で、調理鍋の場所とか知りました。しかしこの格納庫の奥になにかあるかどうかは、動画になっていません)

 まあなんというか……あいつがこの間出くわした吸血鬼は、心は普通の人間と変わりなかったようだが、吸血鬼らしい吸血鬼にとっては、かなり快適な家になるんじゃないかって気がする。
 ただ、そんな奴がのこのこと不動産屋に来るかと言われると微妙だし、正体を隠してやってきて、案内したはいいがカプッなんてのはあいつが可哀想だし、「吸血鬼用の家ありマス」なんて告知もできないだろう。
 だいたい、普通の神経した人なら、ここにいるごはんというか家畜というか奴隷というか、そういう人たちをそのままにして暮らすなんてできないはずだ。
 この"物件"についてあいつに教えるかどうかは、少し考えたほうがいいかもしれない。
 そして、見て回っている内に日は暮れてしまったが、いくら人数分のベッドはあるとはいえ(一つはどうしたって棺だが)、さすがにここに泊まるのはあまり趣味がいいとは思えない。そんなわけで俺たちは、リフテンに引き返し、ビー・アンド・バルブに一泊することにしたのだった。