KARASU no ZAREGOTO

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Aug 1

Skyrim不動産案内番外編:The Sanctum

 お待ちしておりました、お客様。わたくしが本日の案内役を務める者でございます。よろしくお願いいたします。
 ところで……最初に申し上げておきたいのですが、この物件については、実はわたくしはまだ中を見たことがございません。概要だけは社の者から聞いておりますが、実際に自分の目で見るのはこれが初めてでございます。そのため、なにかと不行き届きな点もあるかと存じますが、わたくしにできるかぎりのご案内をいたしたく思っております。
(ん? それで案内役ができるのか、とか言われるかと思ったけど、「そうか」だけ? ……それだけ? ま、まあ、いいけど……)
 ではさっそく入り口へ参りましょう。
 この家は魔法的な結界の中にあるそうで、入り口はこのホワイトランの外壁に備わっております。外から見ればただの壁なのですが、内部は、そうですね。ブルーパレスほど広くはないとしても、ドラゴンズリーチとであればそれほど変わらないと聞いております。下見をした者からは、高級感のある神秘的な雰囲気の内装で、これまでわたくしどもの取り扱った物件の中でも一、二を争うのではないかということです。
(って、マジかそれ。それって……どんなん……?)

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 名前は「The Sanctum」と申しまして、入り口はこちら、東の外壁の奥にございます。少し遠くから見ても、この紫の光があるので目立ちますね。これも魔法の一種なのでしょうか。害はないかと思いますが……え、あ、はい。そうですね。ハイエルフのかたであればわたくしどもよりはるかに魔力に敏感ですから、異常があればすぐにお気づきになられますよね。では、さっそく中にご案内してもよろしいですか?
(ああ……どんなんだろ。ちくしょう、あいつなんか、すっごいいい家見つけたんだな)

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 ……これは……

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 ……あ、し、失礼いたしました。思っていたよりもすごい家なので……。確かにこれは、今まで僕、わたくしが見てきた中でも、屈指の豪華さというか……。あ、はは……そうですよね。僕がお客様より先に感激してても仕方ないですよね。ですがこれは、本当に素晴らしい家かもしれません。もちろん、設備の種類や配置もよく調べてみないといけませんが、しかしその点については、下調べの者が太鼓判を押しております。広いため、歩かずに様々な設備にアクセスできるということはないものの、必要なものは揃っており、様々なニーズにお答えできる、と。
 では、そうですね。右手側の一階から見て回るのはいかがですか? はい、ではさっそくこちらへ。

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 最初の部屋は、錬金術店、でしょうか。奥には錬金台もございますね。ええと、こちらの女性は下働きとして用をこなしてくれるとのことです。もちろん売買にもご利用いただけます。
 大規模な邸宅や砦様の物件はこれまでにも見てまいりましたが、練金のスペースにこれだけの余裕を持つ物件はかなり珍しいかと思います。お客様はサルモールの高官であるとおうかがいしておりますが、職務とは別に、練金術や付呪などはなさるのでございますか? 嗜みとして一通りの教養はあるけれど、生業とする者ほどの経験や技術はない、と。それでも教養としてご存知であるのが当然なのですね。 そちらのかたはもう少しは詳しい? それでは……
(うわっ。そうか、怖い人ってこっちの人か。後ろにいるし喋らないし、ハイエルフじゃないぽいし、お付きの人かと思ってたけど……まあでも、僕に怒ったわけじゃないし、この人も別に慣れてるみたいだなぁ)
 失礼いたしました。たしかに、お客様のお時間を無駄にするのは申し訳がございませんので、次へ参りましょう。

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 隣のこの部屋が主寝室でございます。あの衝立は、ドゥーマー風でしょうか。珍しい装飾ですが、不思議と違和感はございませんね。裏側には、あ、観葉植物ですね。
 収納場所の多数はこちらにございますが、この先にディスプレイ用の部屋もあるようです。ただ、こちらの宝箱にはそれぞれ、片手武器や弓、杖などラベリングもしてございますから、多数の様々な物を保管するのには大変便利かと存じます。ネックレスと指輪は、こちらの棚の上の小金庫が定位置となっているようです。
 タンスも、軽装でセットとして揃っているもの、個別のパーツ用といった形用意されておりますし、整頓好きな……というよりむしろ、整頓が苦手な人ほど使いやすいかもしれません。とはいえ、お客様がたはそのようなタイプには見えませんので、これらはかえってご不要、お邪魔なものになるのかもしれませんが、いかがでしょうか。あれば使う? さようでございますか。お邪魔にならないのであればほっといたしました。
 なお、入られるときに既にご覧になっていらっしゃるとは思いますが、この主寝室の前にはミニテーブルがあり、中央の噴水……それとも滝? でしょうか。それに面しております。傍に明かりもございますし、眠れないときにここで読書をしてすごされたりするのも、素敵かと存じます。
 では、そのままお隣、入り口の向かい側にあたる場所へ参りましょう。

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 この部屋は、ディベラの聖堂、だということでございます。ソリチュードの教会を模しているようですが、置いてある祠は……ディベラのものだけでございます。
(タロスでなくて良かったなマジで!? つかそのこと書いといてよまったくもう!?)
 ええと……申し訳ございません。不勉強で、わたくしはハイエルフの信仰についてはあまりよく知らないのですが、特にディベラを信仰されているといったことはございませんよね? もしお気に召さないのであれば、他の神の祠と交換することもできなくはないかと思いますが……。(筆者注:無論、ゲーム中では不可能です)
 え? あ、ど、どうでもいい、と。はい、かしこまりました。では、次の場所へご案内いたします。
(あんまりそういうことには興味ない人なのかな……それにしても不機嫌なのか退屈してるのか……。でもこっちの人は別に全然怖くないし、あっちの人なんてむしろ優しそうなんだけど……)

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 聖堂から出た正面に見えますので、先に中央の集会所をお見せいたします。
 このサンクタムは、元は宗教的な聖域、信仰の場として建造されたものだそうです。そのためこのように、演壇を備えた集会所もあるのですが、そういった用途でなくとも、招いたかたがたとともに議論をかわしたり、あるいは軽い宴会を催したりするのに使っていただけるでしょう。

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 では改めて、外周の部屋のご案内に戻らせていただきます。
 隣はキッチンとなっております。食堂といった趣ではございませんが、ミニテーブルにカウンター、給仕人も雇ってございます。数人でテーブルを囲むのであれば、やはり部屋の外、水場に面したところのほうがよろしいかもしれません。
 この給仕人とは売買もできますので、ホワイトランの雑貨店などではまかないきれなかったものを処分なさるのにも便利ではないかと思います。
 なお、このキッチンのドアは地下に続いておりまして、その先には浴場があ……キッチンから……? 失礼いたしました。しかし、キッチンから浴場へというのは……少しばかり妙に思えますので。

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 なるほど。家主の個人的な浴室というよりは、客人たちとのサロンといった感じでしょうか。奥には2台ベッドもございますね。のぼせてしまったときや、少し涼みたくなったときなどにお使いいただけそうです。

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 外周にある部屋は、4つの角に位置しております。最後の一つがこちらのディスプレイルームでございます。って……!?

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 なっ、なんだこの床……っ!? お、お客様、どうかお足元にお気をつけください!
(うわあなんか今さらっと便利そうだなとか言ったけどその便利って絶対いろいろヤバい方面だよねぇ!?)
 え、ええと、ここの床が何故こうなっているかについては、下見の者も見当がつかないそうです。わたくしも……な、なんでこうなってるんでしょうか。どうやら完全に透明なガラスでも張られているのか、網目に足が入るといったことはないようですが……。
 と、ともかく、ここにはドラゴンプリーストの仮面を飾る専用の台や、マネキン、展示台、武器ラックなどがございます。
 上にあるプランターは、おそらくこの熱を利用して栽培するためだとは思いますが、……あ、さすがハイエルフのかたですと、手が届くのですね。僕はぎりぎり下の段のものを摘めるかどうかです。上の段は……そうですよね。さすがに無理ですよね。
(それにしてもこの一番偉そうな人って、ハイエルフ……なのかな? まあ、そうでもなかったら2人が従ってるわけもないんだけど……この人だと全然届きそうにないんだけど……もしかしてちょっと不機嫌……? 気のせいかな……)
 では、そろそろ二階の回廊と、塔中央へご案内いたしますね。

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 回廊への階段は東西にございます。数体のマネキンが設置してあるだけではございますが、このような場所ですので、見栄えのする鎧一式などを飾られると素敵ではないでしょうか。
 回廊の役割は、中央の塔、集会所の上部にあたる部分へのアクセス通路でございます。

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 橋で中央に参りますと、滝をくぐった先に鍛冶設備と付呪台がございます。屋内にあるものにしては珍しく溶鉱炉も備わっておりますので、スカイフォージ限定の武具を作ろうとされるのでないかぎり、不自由はございません。
 そして、この階段の先にございますのは、スカイリム各地に通じるポータルでございます。
(へえぇぇぇ、そんなすごいものまであるのかここ……便利そうだなぁ)

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 ええと、この……あ、あれ? 行き先は……あ、は、はい。ええと、行き先がですね、スカイリムのどこか、としか分からないので……。
 おそらく、都市の中ではなく、入り口付近に通じてるいるためでしょう。それぞれの行き先を示す印でも用意しておいてくれれば便利だったのですが……。え? あ、そうですね。せいぜいで8つくらいのものであれば、覚えればいい、と。たしかにおっしゃるとおりです。
(それをさっと覚えられる頭がある人ならではだよなこのあっさり加減……)
 それで、実際に使ってみたレポートによりますと、各地にポータルとなるこの石像があり、それによってここと行き来ができるとのことです。

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 分かっているのは、階段を登ってフロア中央を向き、左がソリチュード、その左隣りがウィンターホールド。右側は、ドーンスターで、もう一つある像はマルカルスだそうです。
 他の都市のところは現時点では像がなく移動ができないのですが、設計士によると、これは都市近郊で像を発見することで、こちらとつながるようになっているとのことです。
 ポータルは合計8つですので、スカイリムの要塞各地、ということで間違いはないかと存じます。ですので残りは、リフテン、ウィンドヘルム、ファルクリース、モーサルでしょうか。ホワイトランには先ほどお入りいただいた玄関にあたるものが存在しますから、わざわざ外に設置する必要はございませんし。

 ただ……もうお気づきかとは思いますが、どうやらこの物件には、ベッドが主寝室に一台と、浴場に2台しかございません。浴場のものは就寝に使うというわけにはいかないとなると、ええ、最初におうかがいしていた、客人を招くために使うのには少しばかり不自由がございます。もちろん、ホワイトランの宿バナードメアをご利用いただくとか、あるいは、事によるとドラゴンズリーチの首長のもとへ一泊するといったことも、サルモールのかたであればできるのかもしれませんが、その点はいかがでございますか?
 さようでございますか。はい、もちろん、お気に召さない場合には、他にいくつか心当たりの物件もございますので、そちらをご案内させていただければと思います。
 はい? ええ、もちろん、ございます。ソリチュードの街道脇にある中型の邸宅や、イヴァルステッドの湖畔に帝国風の屋敷もございます。更に大きい砦型のものもまだ空いております。社に戻って資料を確認すれば、もう何軒かは、ご要望に添えそうな物件を見つけられるかもしれません。
 はい。かしこまりました。では早急に整えますので。え? 明日、でございますか? ……かしこまりました。必ずご用意いたします。はい。では、明日の朝10時に、店舗にてお待ちいたしております。




【どうでもいい、うらばなし】

「にゃーくん。うまくいったと思う?」
「俺に聞くなよ。俺、初めて今、ストレスで胃が痛いっての味わってんだから」
「まあエスケルテス殿とタリス殿であれば問題はなかろうがの、レイニール卿が最後まで我慢してくれるかとなるとのう」
「タリスさんは嘘つけなそうだから、かえってそこからボロ出そうだけどね」
「だから喋らないことにしたんだろ。あー……マジ胃が痛ぇ」
「そもそもこれ、どういうことなんですか? 私はよく知らないのですけど」
「スノウさんいなかったっけ?」
「あのね、ほら、にゃーくんの友達の不動産屋さんいるでしょ? あの人がちょっと前に、美人な吸血鬼のおねーさんに捕まっちゃったんだって。それでメロメロになってたところを、助けるのは助けだしたんだけど……」
「それっきりあいつ、正気に戻るなりもう辞めるこんな仕事絶対に嫌だってヒステリーとパニックといっぺんに起こしたみたいになっちまってさ。不動産業やってたから襲われたわけじゃないだろって言っても全然通じなくて。アタタタ」
「それで鬱になって引きこもっちゃったのを、なんとかできないかって言ってたわけよ(´・ω・`)」

「そう。そしたらエスケルテスさんが言い出したのは、一芝居打ってみようってことで」
「芝居、ですか?」
「そそ。あの子、今はトラウマのせいで見境なくなってるだけど、仕事にさえ戻ったら絶対に立ち直るっていうか、それしか立ち直る方法ないでしょってのは、にゃーくんもおじさんも思うところでね(´・ω・`) おじさん、あの子と一緒にお船回ったしさ。だからとにかく仕事に連れだそうとしたんだけど、そう簡単には出てきてくれないわけ。で、どこぞの国の女神様だったら扉の前で裸踊りでもすればいいんだろうけど、そーゆーわけにもいかないし? いやもちろん誰か試してみてくれてもいいんだよ?(΄◞ิ౪◟ิ‵)」
「おっさん……」
「(๑>؂•̀๑) だから、サルモールの高官に化けて、まずは一つ、こんなんで納得できるかぁゴルァ! もう少しマシな案内人寄越せやオルァ!(ʘ皿ʘ ╬) とやれば、出てくるんじゃないかってことになったわけ」
「それって、出てきてくれなかったらどうするんですか」
「そのへんはな、あいつの上司の覚えっていうか、絡む奴だって結局、あいつがうまく商談まとめてくるのが実力だってことは分かってんだよ。で、あいつはお人好しで、世話になってる上司とかにすがられたら、突き放せるような奴じゃない。もしそれでも駄目だったら、もうホント駄目だろって」

「で、彼の好きそうな凝った物件があるのをお店の人が教えてくれて、ここに連れ込んで仕事したら、きっとなんかそういう、怖いこととか嫌なことなんか吹っ飛んで、戻ってきてくれるんじゃないかなってことになったの」
「それで、もしかして今……?」
「うむ。今朝待ち合わせで、今頃はもう終わった頃じゃろうかな」
「でも、そもそも大丈夫なんですか? 病み上がりみたいなものですよね? しかも怪我とかじゃなくて、心の傷ですし」
「そこはほれ、例の同僚氏から今朝の様子は知らせが来ておる」
「あいつ、たしかに弱気でへっぽこなとこはあるけど、開き直るとけっこうタフなんだよ。それにたしかに、すごい家見つけてそこに行って、あれこれ案内してたら嫌なこと吹っ飛ぶだろうってのも、そうだと思うぜ? ただ……」
「ただ?」
「役者のほうがボロ出して台無しにしないかが心配で心配で……っ」

「なるほど」
「にゃーくんも繊細なところあるんだねぇ(´・ω・`)」
「ていうか、サルモールってほうが危機感はあるし厄介だってのは分かるけどな? それに、威圧感バリバリで普通の案内人じゃビクついて仕事にならないようなって言ったら、そりゃおじさんは適任だろ。けど、そもそも乗り気じゃなかったし、ていうかタリスさん行く必要ってあったのかって今思ったぞ俺」
「そういえばそうよね。あたしが会った中で、ハイエルフらしくないハイエルフのワンツー・フィニッシュがタリスさんとスノウさんだもん」
「そこはエストおぢさんの余計な気遣い100%濃縮還元生ジュースと見た( ತಎತ)」
「あの人いたら迫力半減だよなむしろ」
「あ、でもさでもさ、フードかぶってあんまり顔見せず黙ってたら、姿勢いいし、体格いいし、けっこう威圧感……、……無理よね?」
「無理、でしょうね。それで隠せないものもあると思います」
「はあぁぁ~……」
「ナマコおつかれ、にゃーくん(´・ω・`)」


(そんな裏側があったりなかったり)