会期終了しました
展覧会のお知らせ
Other Rooms
アーティスト:狩野志歩、橋本晶子
会期:2022年6月1日から19日(休:月火)
会場:当日お知らせしますので、以下の住所までお越しください。
150-0032
東京都 渋谷区 鶯谷町 12-6
LOKO GALLERY一階にて部屋の詳細をお知らせします。
東急東横線 代官山駅 正面口より徒歩6分
京王 / JR / 東急 / 東京メトロ 各線 渋谷駅より徒歩10分
企画・主催;澤隆志、水田紗弥子
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
協力:LOKO GALLERY, 株式会社FRM, Little Barrel
予約方法
https://otherrooms.peatix.com
上記URLより希望日時をお知らせください。
・担当者が部屋までご案内します。
・1時間半の時間枠につき自由にご鑑賞いただけます。
・部屋にはおひとりで入場していただきます。
予約期間
6/1~4, 6/8~11, 6/15~18
11:00-12:30、12:30-14:00、14:00-15:30、15:30-17:00、17:00-18:30
6/5,12,19
12:00-13:30、13:30-15:00、15:00-16:30、16:30-18:00
このたび狩野志歩、橋本晶子による二人展「Other Rooms」を開催します。
本展はコロナ禍下で相次ぐ展示の中止や延期に直面した2020年に作家とアイディアを共有し、たったひとりの「部屋」で、作品と向きあい、長い時間を過ごすことができたらという思いのもと企画いたしました。
狩野と橋本の作品の共通点に「ここにいながらも遠くを感じる」というテーマがあります。橋本のドローイングは画面の外に続き、狩野の映像は部屋のなかにも沁み出していく、作品だけでは完結しない体験をそれぞれに感じてもらえたらと思います。
展覧会をウェブ配信やVR、SNSでインスタントに見ることができ、作品を観る価値や意義が変容している昨今ですが、時間をかけて作品に向き合う体験を創出したいという思いのもと、あえて少し不便な招待・予約制の展示といたしました。会期も短いなか、お手数ですがご予約のうえ、ご高覧ください。
会場のご提供をいただきましたLOKO GALLERY に心よりお礼申し上げます。
(企画者)
ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』のなかで繰り返されるこのフレーズは、ひとつの物語からいくつもの物語が生まれ、はてしなく続いていくことを示唆しています。いつか開かれる扉の前で佇んでみることも、物語の愉しみなのかもしれません。この部屋は、扉のこちら側、ひとりで過ごすために用意されました。
向こう側の微かな気配を感じ、ここにいながら遠くの景色を惟るように。
(狩野志歩)
絵がそこにあるとき、ここと遠くとがささやかに触れ合う。
何気ないしぐさの隣、すぐそばの遠く、ここにある別の道筋。 あなたがここにいるあいだ、その決して越えない一線と触れ続ける。
どうぞごゆっくりお過ごしください。
(橋本晶子)
アーティストプロフィール
狩野 志歩 ● かのう しほ
武蔵野美術大学映像学科卒業。武蔵野美術大学「パリ賞」受賞及び文化庁新進芸術家海外留学制度にてCité internationale des artsに滞在(2005-2006年/パリ)。Media City Film Festival(2000年/カナダ)グランプリ受賞、「イマジネーション 視覚と知覚を超える旅」東京都写真美術館(2008年)、「彫刻プロジェクトin鎌倉2016」(ソロ・ヴォーカル:渡邊ゆりひと)神奈川県立近代美術館 鎌倉別館(2016年)など。
橋本晶子 ● はしもと あきこ
武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程修了。主な活動として、「I saw it, it was yours.」ギャラリー小柳(2021年 / 東京)個展、「Ask him」資生堂ギャラリー(2020年 / 東京)、「Yesterday’s story」 Cité internationale des arts(2018年 / パリ)個展、「It’ soon.」Little Barrel(2018年 / 東京)個展他、Art in the Office2017受賞、第14回shiseido art egg賞など。
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僕は当該建築がそこに存在しない”建築展”にモヤモヤする者である。「建築」にはアウェー故の構えが出てしまうが「物件」に尺度を落とすと俄然語りたくなる者である。共感の引き出しも豊富だし、ヘンテコ物件をひやかして悦に⼊る性癖もあるし。
2020年から続くコロナ禍下で数多くの悲惨を⽿にしたわけだけど、唯⼀プラスがあるとしたら、デスマーチが世界中で⼀時停⽌して皆が部屋の中で内省する機会を得たことではないかと思っている。学⽣の頃のような、不安で⽢美な部屋の時間が降ってきて、横の連帯や団交につながったのではないかと… 部屋はシェルターでもあり舞台でもある。後の映画監督や芸術家に多⼤な影響を与えた「アメリカン・アンダーグラウンドシネマ」の源流の⼀⼈ケネス・アンガー。処⼥作「花⽕」は、家族のいないあいだにこっそり部屋で撮影された。儚くも強烈でエロティックな夢想。⾃作⾃演のモノクロ短編映画であった。1947年。アンガー20歳のころ。
僕は⼤昔、「部屋の時間」とタイトルしたプログラムを数回作っていた。部屋での由無し事を描く作品群。揺れるカーテン、コップにみちみちた⽔、電灯がついたり消えたり… ⻄⼭修平、セディ・ベニング、徳永富彦、才⽊浩美、能瀬⼤助らの発⾒に勇気をもらった。別の機会には、カポーティをもじって「遠い声遠い視野」なる上映会も企画した。慣れ親しい空間からの、遠くへの希求を集めた。短編集のかたちをした物件案内でもあった。そういえば、モリッシーの「Let the Right One Slip In」を引⽤したトーマス・アルフレッドソンの美しいホラー映画は、招待されなければその家に⼊れないとされる吸⾎⻤伝説に基づく。2022年の本展は作家と企画者と鑑賞者の招待共犯同居企画である!
さて、武蔵野美術⼤学の学内賞でCité internationale des artsに⼀年間滞在できる制度があるそうだ。今回展⽰参加の狩野志歩、橋本晶⼦の両⽒は、年度は違えど同じ部屋で、同じく部屋に寄り添う作品を着想していたようで、僕はこういう偶然がとても好きである。映像と平⾯、扱う媒体は違えど両⽒は空間に寄り添いつつ、“ここ”の空間体験を”どこか”へ滲ませる。そのためにも、本展は予約制にして部屋を専有していただける設えとなっております。ごゆっくり。
(澤隆志)
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表現することとは孤独な部屋に篭ることであり、部屋を開け放ち⾒てもらうことが展覧会なのだと思う。これは私にとっての展覧会のイメージで、今回もそういうことを思ってふたりのアーティストにお声がけした。都内のお屋敷もいくつかアタックしたが理解を得られず、隠れ家のようなこの部屋に縁をもらった。この部屋は、展⽰のためにさまざまなアーティストが滞在したり、制作を詰めるカンヅメのための部屋で、ここから⽣まれたアイディアは数えきれないだろう。
橋本晶⼦の作品を鉛筆によるドローイングと括るのは無理がある。今回は海辺を歩いていると、いつの間にか静かにダイブし気づくと瓶の中に⼊っているような感覚にもなる。絵画が空間に侵蝕し、時空を超えて過去の絵画にも⼊っていく。狩野志歩の映像作品も同じように、モニターで完結することはない。窓越しの⾵景なのか部屋の⼀部なのかと⾝体が揺らぐような体感がある。微かな光や⾊の変化、気づかないほどの⾳、秒針はどの部屋から発せられているのか?
ヴァージニア・ウルフは創造活動の源には、「個室とお⾦」が必要だと『⾃分ひとりの部屋』で述べている。「個室とお⾦」が意味しているのは、社会の価値観や規範に囚われず、さらに⽇々の雑事からも離れ、創作の邪魔になるようなものから解き放たれた鍵付きの空間だろう。アーティストの作品を⾒て いると、「鍵付きの⾃分ひとりの部屋」を誰もが持っているように思えてならない。それはウルフの意図するような実質的な空間とお⾦ではなくても、もうひとつの時空をつくり出し、⽣き、発信するための基地だ。アーティストと話しているとき、その基地での孤独な作業が、いつも背後に⾒え隠れする。コロナ禍下がスタンダードになった世の中で、『⾃分ひとりの部屋』への想像は豊かに切実になった、と同時にメタバースやミラーワールドはパラレルで実態のない部屋をたくさん浮遊させるだろう。作品を鑑賞するときすら、スマホを⼿放せない私たちは、どうやって作品に向き合えばいいんだろう。でもまずは⼈⽬を気にせず、ひとりで⾒て、それぞれが作品を⾒る経験を取り戻せてもらえたらと思う。
親密で排他的な企画にチャレンジしてくれたふたりのアーティストと、この企画を⼀緒に発案した澤さんに改めて感謝を。想像以上に遠くまで連れてきてもらって驚いている。
(⽔⽥紗弥⼦)
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