SS~ドレッドボムの記憶~

※ 創作記事です。
筆者:ESTL  編集:Gecko

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「~~~ッ! ~~~ッ! ~、~、~、~ッ! ~~ ~ッ!」

 フリートコマンダーが何かわめている。それは早口の英語で、しかも地域の見当がつかない”なまり”が含まれたものだ。マンブルから発せられていると知らなければ、それが英語であるとすら気付かないだろう。それぐらい何を言っているのか分からない音声だった。

 しかしそれは間違いようのなく決定的でクリティカルな指示でありなおかつ自分を含むドレッドノート40隻を含むキャピタルフリートに対して放たれたものであることには何の疑いもなかった。

 その確信をもって私はUndockの操作を行い、そこで何が待ち構えているか全く判別のつかないサイノシューラルフィールドへNaglfarをジャンプさせた。

 このNaglfarはフォームアップ時にFCから指定されたFITに換装されていて、各種モジュールを起動するための燃料の積載はトリプルチェックが済ませてあり、そしてこのキャラはGSF指定のスキル条件を満たしていることからアライアンスに対して100%の船体補償を請求出来る。当然プラチナ保険も掛けている。迷う必要はなかった。

…ところで、Jump先を指定する一瞬に視界に入ったシステム名――DO6H-Q――には何となく見覚えがあった。だが当時の自分にはそんなことを気にする余裕など欠片もなかった。



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 ことの顛末はKirkland Protein Warなどというふざけた名前の付けられた、NEW EDEN北部を舞台とする戦争に振り返る。自分はGSFの末端戦闘員としてその戦争に参加し、多くのストラクチャやPOSを撃ち、時には船を撃ち、またある大規模作戦ではキャピタル艦でシタデルにDockして指示を待った。

 GSFの大規模作戦では総勢1000とも2000とも知れない数多くの艦船が動員される。その中には主力のスーパーキャピタルフリート、それに付随したキャピタルフリート、現場を駆け回るサブキャピタルフリート、得体の知れないクローズドなフリート等々が立ち、それぞれのフリートへGSFメンバーは任意で自由に参加することが出来る。なぜ任意で問題ないかと言えば、大抵はそれら全てのフリートが埋まってしまうためだ。主要フリートからあぶれたGSFメンバーは、別のFCによってかき集められ更にフリートが立つ。

 私は当時自身のスキルや金銭面の問題から、基本的に大規模戦闘ではキャピタルフリートに参加することが多かった。正直言うとメガソロンフリートで駆けずりまわされることに嫌気が刺したというのもあるが、どうせ参加するならキャピタル艦で出撃したいという願望もあったためだ。

 キャピタル艦隊の常として、エスカレーションしなければ出番はない。しかし数にものを言わせるGSFのストラテジック・サブキャピタルフリートが立てられた場合、エスカレーションすることは得てしてほぼなかった。

 ドレッドノートもその例に漏れることはない。サブキャピタルフリートによる作業工程が完了するまでレンジ内のシタデルにDockし、YOUTUBEを見ながらステージングへの帰投指示を待つことが当時の私にとって重要な任務となっていた。

 ところが冒頭のように”それ”は突然やって来ることになる。

 結果から見れば暇を飽かしたGSFキャピタルコマンダー陣が迂闊なタイタンが浮かんでいることをどこからか聞きつけ手近なドレッド部隊を投入させたに過ぎず、戦争の勝敗に関わるような作戦ではなかった。しかし今は無きCO2のステージングのキープスター前で展開されたこの戦闘は、私のカプセラ生活における一つの大きな忘れ難い記憶となった。


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 ESTL氏が記事用にと寄稿してくれましたので、掲載させていただきました。