マンガプレゼン大会を開催しました!

10月21日(土)渋谷のマンガサロン「トリガー」で、マンガプレゼン大会を開催しました!天気はあいにくの雨。台風上陸前夜にも関わらず、たくさんのマンガ好きがお越しくださいました。

プレゼンされたマンガは、ジャンルも年代もバラバラ。お集まりいただいたスピーカーの方々も、マンガ好きという共通点を除いて様々。なんと岡山から足を運んでくださった方まで!

マンガ好きの熱い想いが飛び交う素晴らしいイベントになりましたので、その様子をお伝えします。

マンガプレゼン大会とは!?

本題に入る前に、まずはマンガプレゼン大会について簡単にご紹介します。事前に申し込みいただいたスピーカーの方々に、「今、私が1番推したいマンガ」について制限時間5分でプレゼンしていただきます。そして、最後に観客の皆さまが「1番読みたくなったマンガ」を投票で選びます。決まりごとはこれだけの、シンプルなイベントです。

今回は9名の方々が、スピーカーに名乗りを上げてくださいました。

ダイジェスト版 プレゼン大会!

それでは、発表されたマンガとプレゼンの様子をダイジェストでご紹介いたします。作品はレポートの最後にリストにまとめています。気になったマンガはぜひ読んでください!

モリモトタカシさん アサイ 作『木根さんの1人でキネマ

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最近、映画を題材にしたマンガが増えてきました。その火付け役になった作品だと僕は考えています。映画が大好きなアラサーのOL木根さんが、映画を見て感想をいう話です。特徴は映画のことを全く知らなくても面白いということ。それどころか、映画が見たくなる。そんなマンガです。

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そして、映画について語っているだけではありません。映画をモチーフにした話も多く、例えば『インディ・ジョーンズ 』を扱った回では、「嵐の中、なぜ映画館に行くの?」「そこに宝があるからよ!!」といったインディ・ジョーンズさながらのやりとりが、クライマックスになる話になっています。

片桐さん はらだ 作『にいちゃん

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恋愛を描いたマンガは、その恋が困難であればあるほど面白くなると思います。はらだ先生の「にいちゃん」のジャンルはBL。BLマンガを読んで、僕が面白いと思うポイントは、恋愛のハードルが飛躍的に上がるところです。例えば、BL作品は友達というだけで恋愛のハードルがとても高くなります。

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このマンガの描く恋愛は、男性同士というだけでなく、少年愛という禁忌にも踏み込んでいます。また2人の関係が共依存的で、BLでしか描けないドロドロした展開は、ダウナー系の話が好きな人にはおすすめです。

三溝さん 佐藤将 作『アコヤツタヱ

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日本の古代史、ちょうど鉄が伝来した頃の日本が舞台。その鉄の製法を巡る、山のウエの村とシタの村の戦いを描いています。もう一つの軸としては、山の神のオロチが登場し、主人公の少女を狙う影の存在として暗躍しています。

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このマンガは佐藤将の過渡期に当たる作品だと僕は考えています。前作はバリバリギャグマンガを描かれていますが、この次の作品では原作として、シリアスな話を書いています。救いのない終わり方をするので、シリアスな調子で話を作りたかったのかなと思いつつも、ギャグを交えたバトルをやりたそうな雰囲気も端々から感じます。そんな過渡期の作品で、この時にしか出せない情念があります。

ヒラタトモヨシさん 美内すずえ 作『ガラスの仮面

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今というか、40年間ずっと応援しています。演劇が題材のマンガなので、劇中劇が何度も描かれます。そこで主人公の北島マヤとライバル姫川亜弓が、バトルをします。スポーツマンガでいえば試合のようなものです。

北島マヤは実に多彩な技の持ち主で、すごいと思ったのは、脚本を全部組み替えて一人芝居にしてしまったり、劇場の気温を上げる技です。

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ただ、マンガの技がこれだけすごいと、リアル演劇が物足らなく感じる時期が私にはありました。しかし、90年代に『ガラスの仮面』に登場する技を、本当にやった人たちがいます。「惑星ピスタチオ」という劇団で、佐々木蔵之介さんや西田シャトナーさんを輩出しています。まれにですが、そんな方々も現れるので、マンガの世界と現実の世界をクロスしながら楽しむといいと思います。

さえきさん 横田卓馬 作『背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~

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社交ダンスってご存知ですか?男女がペアになって踊る、童話の舞踏会をイメージをしていただくとわかりやすいと思います。その優雅で美しい世界を王道少年マンガにしたのが、この作品。バトルマンガとして読むとすごく面白い。つまり、舞踏マンガを武道マンガにしたんです。

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フロアにいるダンサーたちが、競技中にペアだけでなく敵とも意思を通わせるシーンが出てきます。自分が思っていること・相手の考えていることを伝え合い、ダンスだけでなく脳内の戦いを繰り広げるわけです。僕はダンサーとして活動をしていますが、実際にあるんだけど見ているだけではわかりづらい部分を表現したいいマンガだと思います。

千葉さん 佐藤史生 作『やどり木

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佐藤史生さんは作品の世界観を完璧に作り込むマンガ家です。紹介する『やどり木』はバーゲンセールで安く売られた辺境の惑星ハザンを舞台に、「超人」になるため、ミスルトという植物を摂取し新しい脳を手に入れようとする少年たちの話です。

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100ページ弱の短編作品に、壮大な世界観が詰まっています。それなのに、使い捨てなのか!と残念になってしまうほど、この世界や設定は他の作品には登場しません。読むたびに新しい星や世界と出会えるのが佐藤史生先生の魅力です。

にゃんたんさん 岩明均 作『風子のいる店

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岩明均先生の初連載作品です。吃音を治すために喫茶店で働く風子が、喫茶店にいる人々と交流を深めながら成長していく話。「究極のリアリズムマンガ」とも呼ぶべき作品で、読者も風子と一緒に成長している気持ちが味わえます。

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この漫画には「才能があるからといって、その道に進むばかりが良い人生とは限らない」という裏テーマがあります。後半に登場する陸上部の田島は、将来を有望視される選手ですが、風子に影響を受け「走る」以外の人生を歩みます。ここには、田島の人生が描かれている。それがいいと思うんですよ。全4巻で半日あれば読めます。読まずに死ぬのはもったいない。

国府町怒児さん カトちゃんの花嫁 作『歯のマンガ

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「歯のマンガ」というアカウントで2012年から、Twitter上で更新されているウェブマンガです。
独特の雰囲気が受け高い人気を博していますが、なかなかその面白さを言語化するのは難しいです。
ただ今回はプレゼンということで、私なりに気づいたいくつかの人気の秘訣を紹介しようと思います。
まず、ボケやツッコミの明確な役割が存在しないこと。
かっちりと関係性を決めすぎないことで、キャラクターに幅が生まれます。

さらに誰かを傷つける話がないこと。
そして、ゆるさによって作られるなんでもありな世界観が、強気なギャグを納得させているのかなと思います。
歯が自由に動き回るファンシーな世界を一度味わってみて下さい。

以上、8名のプレゼンをご紹介してきました。スライドを使う方、マンガを片手にトーク一本で勝負をする方、ノートに手書きで紙芝居形式で発表する方など、プレゼンの手法も様々。

しかし、皆さま一様に、マンガへの思い入れ、熱量、愛情は並々ならぬものがありました。

ダイジェスト版ゆえに、ここには書ききれなかったこともたくさんあるので、次回はぜひ会場までお越しください!

さて、ベストプレゼンテーターに選ばれた方のプレゼンに移る前に、大人気だったケータリングについても、ちょこっとご紹介させてください。

かわいくておいしいと好評の「粒粒」!

19時。普段なら、夜ご飯を食べているような時間ですよね。大好物とはいえ、マンガの話でお腹は膨れませんので、当日は軽食を用意していました。

今回お願いしたのは、「粒粒」さん。おにぎり中心のメニューは、おいしくて、見た目もかわいい素敵な料理ばかり。盛り付けにもこだわっていただき、透明なアクリル板からマンガが覗くようになっています!

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選ばれたベストスピーカーは…!!

さて、ついにベストスピーカーの発表です。並みいる強豪をおさえ、見事ベストスピーカーに選ばれたのは、さのあやなさん!

わかりやすくキレイなスライド。要点をシンプルにまとめた構成力。あふれる作品愛。とても素晴らしいプレゼンでした。マンバからは、賞品としてオリジナルデザインの図書カードを贈呈。今後のマンガ読みのためにご利用いただけると嬉しいです。

そんなさのあやなさんのプレゼンを少し長めにご紹介‼︎

さのあやなさん 衿沢世衣子 作『うちのクラスの女子がヤバい

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思春期の女子にだけ発動する役に立たない超能力「無用力」。そんな能力を持つ女子たちが集まる共学高校が舞台です。推薦ポイントは「少女漫画と少年漫画のハイブリッド」「推しが見つかるオムニバス形式」「モノローグを使わない手法」の3つ。

少女漫画はリアルな会話や感情表現、心の機微を描き、なにも起きなくても面白いのが特徴だと思っています。逆に少年漫画はあらすじを聞くだけでも面白いですよね。『うちのクラスの女子がやばい』はそのどちらも兼ね揃えたハイブリッド漫画です。

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また、いろんな力を持った女の子が登場し、毎回違う女の子にフォーカスを当てる1話完結のオムニバス形式。主人公として描かれた女の子が、次の話では脇役のクラスメイトとして登場したり、1話につき楽しみポイントがたくさんあるシステムになっています。

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そして、『うちのクラスの女子がヤバい』にはモノローグがほとんどありません。私たちの生活にモノローグってありませんよね。現実に即した手法が、突飛なキャラクターでも本当にいそうに思えてしまう力を与えていると思います。

とにかくキャラクターが魅力的です。超能力とか不思議な力を持っているんですけど、普通の子たちとして個性を愛を持ってかき分けている作家さんなので、あなたの周りの同僚や友人、家族がもっと愛おしく思えるようになるはずです。

いかがでしたでしょうか。当日の雰囲気が少しでも伝われば幸いです。

紹介されたマンガはいずれもマンガ好きの一推し作品です。気になったマンガは全部読んでみてください!

これからも楽しいイベントを企画していきますので、よろしくお願いいたします。

プレゼンされたマンガリスト