声幽ネットワーク論(1)

2.声幽ネットワーク論

 2-1ゼロ年代における深夜アニメと声優の関係

この節では,ゼロ年代における声優の環境の変化についてまず踏まえつつ,「2・5次元性」という声優の持つ特徴について論じたい.

  まず,声優は,大辞泉によれば,以下のように説明されている.

【声優】せい‐ゆう              〔‐イウ〕

声だけで出演する俳優。アニメーションやテレビゲームなどのキャラクターの声を担当したり、外国映画の吹き替えなどを行う.

  声優は,ゼロ年代,特にゼロ年代後半から,徐々に注目を集める存在になってきた.その大きな理由として,「深夜アニメの増加」による需要が挙げられるだろう.

 下の表 0-1は,地上波,BS,CDで放送された国産のテレビアニメの本数である.カッコの中は,その年の新作で有名なタイトルの作品である.[1]

表 0‑1 地上波, BS,CSで放送された国産のテレビアニメの本数

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  そして,もう一つのグラフは,2000年から2011年にかけての深夜アニメの本数である.

表 0‑2 ゼロ年代 深夜アニメ 本数

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  明らかに深夜アニメの増加によって,日本国内のアニメ数が爆発的に増加している.このことは,わざわざグラフにするまでもなく,よく言われていることなのしれないが,改めてその急激な変化について理解することができるだろう.

 アニメ数が増えたことによって,必然として,アニメのキャラクターを演じる声優の仕事も増加した. また,ここには含まれていないが,ゲームにおけるキャラクターボイス(以下,CVと記す)の需要も増加していることからも,声優の範囲は増加し続けていると言っていいだろう.近頃では,「ガールフレンド(仮)」([2]のようなソーシャルゲームにまで声優需要が広がっている.

2-2 90年代アニメにおける林原めぐみ

 声優に対する需要の増加によって,必然的に供給も増える.それに伴って,声優が受容される社会的な環境も変化する.

 例えば,90年代のアニメでは,林原めぐみという存在は圧倒的なプレゼンスを誇っていた.現在の「声優アーティスト」のモデルを作り上げた.また,ラジオパーソナリティとしても,非常に活躍した.

 アニメを見ない人にも「声優」という存在を認知させたのは,林原めぐみであったといっても過言ではないだろう.それぐらいに,林原めぐみは,現在の声優を考える上で重要である.

 また,林原めぐみが演じたアニメを見た世代が「ゼロ年代」声優であるということも非常に重要な点である.「閣下」とも呼ばれる林原めぐみは,多くの声優にとって,尊敬の対象であり,目指すべき目標とされている.

 現在の声優界において「林原めぐみ」に並ぶ存在はいない.というよりも,正確には,そういった存在が生まれないような環境へと変化しているといった方がいい.どういうことか.

 現在のアニメは,1クールに数十ものアニメが同時並行的に,流れている.また,そのほとんどのアニメが,1クール,2クールといった短期間で,入れ替わっていく.しかも,その中で,ヒット作品になるかどうかというのは,ほとんど確率によってしか判断できないほどに増加している.どれだけ,声優が多くのキャラクターを演じたとしても,そのうち,ヒット作品に巡り会い,さらに,その中で「当たり役」に出会える確率は,非常に低くなっている.その確率は,声優の数だけ,アニメの数だけ反比例的に減少する.

 では,現在の声優には,「林原めぐみ」という存在と比較して,人気がないのかといえば,全くない.個人の人気では,「林原めぐみ」に勝てないとしても,声優全体としては,林原めぐみの頃よりも,圧倒的な人気を誇っている.水樹奈々は,紅白に出場するなどの活躍を見せているし,オリコンランキングに「アニメソング」ではない「声優アーティスト」のシングルがランクインもしている.声優ラジオも爆発的に増えている.今や空前の声優ブームとまで言われている.

 その人気の原因とはなんであろうか.次の節で,私は,「声幽ネットワーク論」というものを提示したい.



[1] http://gigazine.net/news/20121003-tv-animation-history/

[2] Amebaの恋愛シミュレーションソーシャルゲーム.キャッチコピーは「きみの声が,僕を強くする」.現在では,女性向けの「ボーイフレンド(仮)」も,サービス開始されている.何故か井口裕香のキャラクターがいない.くおえうえーーーるえうおおお

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